ボタンが三つ開いたワイシャツから見える首筋。脱ぎっぱなしの靴下と制服。そして覗く素足。エロい。帰宅途中から眠そうにふらふらしていたが、帰ってきた途端ソファで寝てしまったらしい。なまえの裸を何度か見てしまったことはあるけど、なぜかこの姿は目を背けたくなる。そちらに目が行かないように制服と靴下を片付けるが、どうにも視線がふらつく。
(困る…)
襲ってやりたい。…いやいや寝込み?を襲うなんて最低だろう自分。どこぞの片目英国紳士に叱られそうな気がする。
「はーあ…どうにかなんないかなこの天然…」
「どうにもなんないでしょ」
「うわっ、だ、ミストレ!」
「俺だよ」
言葉の後ろに星が飛んでいる、どこかで見たことがあるようなポーズを決めたミストレはいつもこんな調子だった。勝手に出入りしては作り置きのお菓子をかっさらって行く。堂々とした不法侵入と強盗だ。
「なまえのパンツ見たいんだけど。なんでギリギリなの畜生」
「………。」
それはもう悔しそうな顔をしていた。こいつには見せるもんじゃない。なまえの足に自分の上着をかけた。そうだ、最初っからこうすればよかったんだ。
「あーサンダユウのお馬鹿」
「馬鹿じゃない。菓子やるからさっさと帰れナルシスト」
「で、俺が帰ったらなまえを美味しくいただくつもりなんだろ?」
「その辺はノーコメントだ」
ミストレに献上するお菓子を取りにキッチンに向かった。たしか昨日作ったクッキーがまだ残っていたはず。あとでなまえと食べようと思ってたのに…。
「ほれ、ミストレ……ってなにやってるんだよ!」
「ちっ思ったより早いな」
戻ってみると、ミストレがなまえの顔に接近していた。なんとがギリギリのところで引き剥がす。 口を尖らせてなにすんのさ、とミストレは小言を洩らした。
「まぁいいや楽しかったし。また遊びにくるねー」
お願いだから来るときには一言言ってくれと伝える前にクッキーを持って猛ダッシュでいなくなってしまった。逃げ足だけは速い。
「…なんだったんだ」
「うーん…」
風呂上がりにがしがしと頭を拭き、何か疑問があるような顔でなまえが歩いてきた。
「どうした?」
「首になんか赤い点が…これ、じんましん?」
赤い…点?嫌な予感がする。
「ちょっと見せてみろ」
「ん」
「…これ」
赤い点を指先で触る。嫌な予感はばっちり当たった。思いっきりキスマークが付いている。ミストレの野郎…少し目を離した隙にこれか!
「………。」
キスマークの部分に口を付けた。ほんのりシャンプーと石鹸の香りがする。ぺろっと舐めると面白いぐらいなまえの体が跳ねた。でも面白いわけじゃない。他人に所有する印を付けられて、ミストレなんかに傷つけられてかなり不快だった、所謂嫉妬だ。
それから、何分間か分からないけど舐めて、噛んで、ミストレのを上書きするようになまえの首をに顔を埋め続けた。
「サ、サンダユウ…」
「あ…、ごめん…」
怯えたなまえの声。すぐに口を離した。
「大丈夫、なにかよく分かったから」
申し訳なさそうに笑って、髪を乾かすために使っていたタオルで唾液だらけになった首を拭いた。どうせミストレちゃんが何かしたんでしょ、と言った。なんだ思ったよりよく分かってるじゃないか。
「…じゃあ、もっと嫉妬したっていいよな」
「へ?」
「歩けなくなるぐらい、可愛がってやるよ」
「え、え?」
恨むなら、ミストレを恨んでくれ。
―――
まえ|つぎ