*息抜き程度にどうぞ。
「るんるんるん」
物凄く高く積み上がった辞書が足を生やして廊下を移動している。しかも鼻唄付きで。
もちろんそんなファンタジー?や妖怪的な話じゃない。
「なまえ…」
「お、サンダユウ」
やっぱり。
いくらなまえが力持ちだからって、誰だよこんなに持たせたの。これを持たせたやつが、教官だとしても後でしばくと心に決めた。
「重くないのか、これ」
「ああ、触んないでバランス崩れる」
塔のように積み上がった辞書をつついた。面白いぐらいゆらゆら揺れる。力持ちとこんな時だけのバランス感覚だけは認めようと思う。さて、こんなにバランス感覚がいいのに道で転ぶのはどうしてでだろうか。
「ほら、手伝うよ。こういう時は俺に頼れって言っただろ?」
「…頼りたいけどさ。あっ全部は!」
ずしっ。
「うおわっ!」
「重いよ?」
苦笑いしたなまえは三分の二ほど持ってくれた。あれ?なんかこれ…立場逆じゃないか?なまえはどうしてこんなに男らしいんだ?
「バダップ…俺、男じゃないかもしれない」
「付いてるだろ」
―――まえ|つぎ