私は白咲さんと別れてすぐにゴットエデンに養成所は移動になった。そこにいた白竜と出会い、面倒を見てしまったのはきっと面倒見のよかった白咲さんのお陰、というかせい、なのだろう。エデンはもうなくなり、雷門とゼロの試合によりゴットエデンもなくなった。未練はなかった。私がチーム・ゼロに選ばれなかったのは、私自身がマイナスにもプラスにも属さなかったから。……いや、ただ単に実力が白竜よりも下だったからなのか……。それ故白咲さんが心配したような実験はなかった。
以降、ゴットエデンにいた私達は、元の学校に返された。シードとして他校に配属されたみんなは、帰ってこなかった。浪川も湾田も、海王がいいと。御門さんは帝国に帰り、白咲さんも、白恋に残りたいと。何となくわかる気がする。シードといえど一緒にサッカーをしたのなら、サッカーをする喜びを感じたのなら、もうそれは仲間と言って変わりない。

地元の立神学校に帰って、私はひたすらサッカーを続けた。地元の学校にはフィフスセクターの被害があったため、今までサッカー部がなかった。しかし、サッカーの部人員の招集には困らなかった。何しろ、ここにもサッカーを愛する同志がたくさん潜んでいたのだから。
部も軌道に乗り始め、私にもキャプテンマークが馴染んできた頃不動という人が学校を訪ねてきた。不動といえばイナズマジャパンの孤高の反逆児のあの人である。私だって知っている有名人に部員は沸き立った。顧問の先生が連れてきたその人は、まさにその不動さんだった。

「獅子島なまえだな?」
「はい」
「突然で悪いが獅子島よ、レジスタンスジャパンに入る気はないか?」
「レジ?」
「レジスタンスジャパンだ」

レジスタンスジャパン。不動さん曰く素人集団のイナズマジャパンに目に物見せてやろうとするチームだ。確かにイナズマジャパンは不安定で、いつ負けに転んでもおかしくない。試合は見ているが、はっきり言って心臓と胃によくないのであまり好きではなかった。それにもともと、初めのエキシビションから御門さんを失望させたあいつらを好きになれる筈がないのだ。私は……あいつらに本物のサッカーを見せ付けてやりたい。そして出来ることなら、目覚めて欲しい。

「そういうことならば是非、参加させてください」
「よしよし、お前なら引き受けてくれると思ったよ。じゃ、次北海道行くぞ」
「北海道?!」
「合宿ついでに一人一人現地に出向いて招集してるんだ。北海道は遠いからその間に他の奴らと連携取れるようになれよ」
「はい……」

本当に、北海道に行くんだ。きっと目的は白恋の雪村豹牙だろう。白恋……上手くいけば白咲さんに、会える。
ぼーっとした頭のまま、一時帰宅して合宿の荷物をカバンに詰めた。白咲さんに会えるというだけで頭がいっぱいになった。しかし、支給されたレジスタンスジャパンのジャージを着るとこれからのことを思い出して少し身が引き締まった。レジスタンスジャパンには全国から最高のプレイヤーが集まっている。今までサッカー初心者とゆるゆるサッカーの練習をしていただけだ。もしかしてみんなの足を引っ張ってしまうかもしれない。
…弱気じゃダメだ。レジスタンスジャパンとして、イナズマジャパンの連中に力を見せ付けるのが私の仕事なのだから。気合を入れ直し、自宅前で待っていたキャラバンに乗り込んだ。ざっと全国レベルの選手の目がこっちを向く。大会に参加してないため、私が一方的に知っている形になるのが辛い。一応自己紹介をしようとした瞬間、ガバッと誰かが立ち上がった。

「なまえ!よく参加したな!」
「白竜!?」
「またあえて嬉しいよ!ゴットエデンで別れて以来会っていないが貴様とのライバル関係は未だに」

煌々と輝く白い髪。強気な赤い目。なんとなくは勘づいていたがやはり白竜はレジスタンスジャパンに選ばれていた。またコイツとの生活がはじまるのかと軽く目眩がする。
つらつら語っている白竜はさておき、先程から視界に入っているのは浪川蓮助……さん。この人も白咲さんと同じく色々お世話になった。

「よっなまえ。久しぶり」
「浪川………さん」
「さんはいらねーよ!また一緒にサッカー出来るな!」
「はい。私の実力お見せしますよ」

浪川と硬い握手を交わしたところで、さっさと自己紹介しろと不動監督に促された。バスに着席しているみんながぽかんとしているのが目に入る。

「元ゴットエデンにいました、今は立神中のキャプテンを務めています。獅子島なまえです。ポジションは基本はフォワードです。テレビや雑誌などで取り上げられているみなさんと一緒にプレイ出来ると聞いて気持ちが高ぶっております。至らない点もあると思いますが、よろしくお願いします」

深く頭を下げたあと黒裂真命さんからよなまえちゃんよろしくね、と声がかかった。彼は聖堂山のキャプテンだ。話し掛けられるだけで背筋が伸びてしまうような、そんな美しさを彼は持っていた。黒裂さんの後ろの席の、千宮路大和さんが「優男め…」と呟いているのを聞いてしまった。なんだろう?仲が悪いのだろうか。



続く



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