「手、繋ぐ?」
「そ、それは兵士としてだな」
「だから兵士ってなに」

雪道を歩くのが下手くそなサンダユウの手を無理矢理掴んだ。きちんと長靴を履いているのにどうしてだろう。なんであろうと、今から乗るのは、数時間に一本のバスだ。いちいち転んでもいられない。

「兵士と言うのは…」
「あっバス!はい小走り!」
「え、うわっ」

サンダユウを半ば引き摺るようにバス停に到着した。良かった、ぎりぎりセーフ。
乗車券を二枚取り、一番奥の座席に座った。今日は空いてるな。乗っている人は二、三人だ。

「だ、だから兵士と言うのはっ…」

なんで息切れしてるんだ。髪もほどけてぼさぼさだ。しかも話、まだ続いていたのか。まぁいいや少しぐらい聞いてやろう。ほんのりと紅潮しているサンダユウの頬を見た。

「人に、頼ってはいけないんだ」
「ふーん…」

私に頼ってる時点で駄目なんじゃないのか。元はと言えば私が居候を決定したんだけども。

「その、兵士とかってさ、サンダユウの学校でやってるの?」
「そうだ。王牙学園と言ってな、とても立派な学園だぞ。…まぁ、俺はマシンの実験台にされたが」
「はぁ?」
「ここの時代に来たのは、そのせいだ」

随分突飛な話だったが、継ぎ合わせると、おうが学園がなにかしら機械を作り、サンダユウを実験台にして八十年前に送った、ということになる。見事大成功にして、これが今回の事件。立派な学園、なんてよく言えたものだ。実験台にしたあとは放置だなんて酷い学園じゃないか。…と言うか、私はこの話を信じていいものだろうか。非科学的過ぎる。でも、本当にサンダユウは悲しそうだった。信じていたのに、裏切られた。そう言いたそうだ。

「…きっと迎えがくるよ」
「うん…」

こてん、とサンダユウの頭が肩に乗った。寝る体勢とも言う。





「これはジャージと言って、一着あれば大変便利なものですよ」
「ほう!」


110512
―――
買い物パート引き摺らない内に終わり。八十年後のジャージ…

まえ つぎ




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