凍った通学路を早足で歩いていると、先に喜多海くんが歩いていた。マフラーも長いし、背も高いのですごく分かりやすい。毎日一緒に通学する、なんて約束はないが自然と一緒になる。

「喜多海くん、おはよう」
「おはよ…。さんだゆうとか言うやつ、どうなった?」
「お留守番させてるよ」

喜多海くんには昨日の内に居候させることを伝えている。色々心配されたが、大丈夫と言うことでまとまった。

「…問題起こらないといいけど」
「あはは、ないない」

何か問題を起こせるほど、しっかりした人間には、見えないのだ。

「まぁなまえを信じる。後で着てないコートとか服とか、貸すから」
「あ、ありがとう」

助かった、節約になる。





「ただいまー」

喜多海くんは部活なので今日は一人で帰ってきた。部活が終わったらコートを届けに来てくれるらしい。それが来たら、サンダユウと外に出て買い物しよう。服の趣味とか、分からないし。自分で選んで貰うのが手っ取り早い。

「サンダユウ?」

居間の扉を開けた。暖かい空気が流れてくるはずが、室温はほとんど室外と変わらない。問題発生ですか。

「…」

成程、ストーブが石油切れだ。ここで使ってるのは小さいし、点けっぱなしなら切れても当たり前か。それにしても、サンダユウはどこに行ったんだろうか。

「…なまえ」

現れたサンダユウがずるずる後ろに引きずっているのは私が使っている毛布だ。昨日は、部屋を暖める石油がもったいなかったので私の部屋に布団を敷いて、サンダユウを寝かせた。ちゃんと部屋の場所を覚えていたらしい。きっと寒さから身を守るためにくるまっていたのだろう。

「寒かった」

暖かさを求めるように抱き締められた。外から帰ってきたばかりなので私の体温は低くて湯たんぽ代わりにもならないだろうけど。

「寂しかった」

サンダユウ、泣いてる。

泣き止んだ後、兵士失格だとかなんとか言って落ち込んでいた。兵士って?


110508
―――

まえ つぎ




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