ぺしりと熱冷ましを新しいものに張り替えた。熱は一旦下がったが、夜になってまたぶり返してきた。しつこいタイプの風邪だなぁ、これは。辛そうだが、ぐっすり眠っているサンダユウの横顔。よしよし、明日には少しぐらい回復しているはずだ。
電気を消して、床に敷いた布団に私も横になった。

夜中に意識して起きようと思えば意外と起きれるもので。サンダユウの様子を見ようと夜中に一度目を覚ました。
あー眠い…。意思とは裏腹に体がなかなか言うことを聞かない。生まれたての子馬か小鹿のようにふらふらと立ち上がった。一歩歩くと足元に物体がぶつかった。…うん?布団の上には私と毛布しかいないはず。そしてこの物体は毛布の感触ではない。だとしたらこれの正体は一つ。ばしりと壁に手を這わせて電気のスイッチを乱暴に押した。

(なんだってこいつは…)

手のひらで目を覆った。
サンダユウが布団の端ですやすやと眠っている。ここまで潜り込んできたっていうのか。何故だ。本当に病人かお前は。熱冷まし剥がれてるし…。抱き付いてこなかっただけましだと思おうか。また新しい熱冷ましを開けて額に貼った。さっきまで貼ってあったのは、きっとあっちのベッドの中だろう。
病人を起こすのは気が引けたので寝ているのをそのまましておいた。さて、私はどうしようか。さっきまでサンダユウが寝ていたベッドを使うのも風邪がうつりそうで怖い。

「なまえ…。もう朝か…」
「違うよ、まだ夜中。寝てて」
「ん…」

眩しそうだったので部屋の電気を消した。代わりに近くにあったデスクライトを点ける。これぐらいの明るさなら読書でもいいかな。

「一緒に寝てはくれないのか…?」
「だーめ」

頬をゆっくり撫でた。
一緒に寝て欲しかったから、私の布団に入ってきた、そういう事か。寝相でここまで来たってのなら大爆笑ものなのになぁ。頬を撫でている内サンダユウはまた目を閉じて、寝息を立て始めた。
きっと未来が恋しくなり、寂しくなったんだ。一緒に寝て欲しかったのは寂しさをまぎらわすためなのだろう。

「早く八十年後に帰れるといいね…」

そしたら私は…、私は…?あれ?今度は、私が寂しい?ううん、そんなことない、そんなことないよ…。サンダユウが八十年後に帰ったら、戦いの怪我が心配なだけで……?おや?おかしい、これは帰って欲しくないって意味なのかな。

ああ、もう!ややこしい!

落ち着いて本でも読もう。


110811
―――

まえ つぎ




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