おれと御門は一年生と三年生で、ゴールキーパーとフォワードで、おれのが背も低くてあいつはでかくて、内面も外面も目に見えて真逆で、無条件に仲が悪かった。それに御門が鬼道総帥のこともよく思っていないことを知ってからぶっころしたいぐらい嫌いになった。
でも。でもさ、たまーに。たまーにだ!シュート決めたり、的確に指示出したりするの、後ろから見ててほんのちょっと、かっこいいかな…って。もちろんペンギンさんは可愛いぞ。いや、御門を尊敬はしてない。おれが尊敬しているのは鬼道総帥と佐久間コーチだけだ。おれがあの方たちのことを一番よく理解しているし、したがってキャプテンにふさわしいのはこのおれだ。いくら三年生だからって御門は認めない。御門への念はどっちかっていうと男らしい男への憧れみたいなもので……。
「………俺の顔に何かついてるか?」
「は、え、べつに!」
ロッカーの扉を乱暴に閉める。
うわ、どうしよう、そんなにあいつのこと見てたかな。何故か顔が熱くなった。属に言う恋だ?恋なわけがない。好きじゃない、こんなやつ。絶対好きじゃない。もし好きだと仮定しても、誰があんながさつな男なんか。そもそもおれは男だ!
「顔赤いぞ?風邪なんじゃないか?」
近い。近い近い近い近い!近づいてくるなよ!
じりじりと後退していたが、ロッカーに追いつめられる。蛍光灯の光が背が高い御門に遮られた。影になってこわくて、伸びてくる手にぎゅっと目をつむってしまった。するりと前髪が上げられた。額に大きな手を添えられた時点でキャパシティーオーバーだ。体が硬直して身動き一つとれなくなる。
「熱いな…医務室行くか」なんでこういうときに限って優しいんだ!おれたちの関係は犬猿の仲だったはずだぞ!
添えられた手をゴールキーパーの握力でぎりぎりと握る。それでもこの骨太野郎は動じなかった。
「風邪なんか引いてない!ばーか!」
「キャプテンに向かってなんだその口のきき方は」
「何回も言っているがお前のことなんかこれっぽっちもキャプテンだなんて思ってないんだからな!」
「分かった。とりあえず医務室行こう」
どうしてそうなるんだ!
また何か言い返そうと身構えると、ふわっと体が浮き上がった。いつも見ている景色と違う。目線が、たか…い…。
「おろせ!」
「医務室着いたらな」
まるで抱えられるようなこの格好、どうしてこうなった。いくらじたばたと暴れてもたくましい腕から抜けられない。気付いた時にはみんなの生ぬるい視線がざくり突き刺さっていた。そんなこと一切気にしていないのか御門はすたすたと出口に向かって歩いてしまう。心臓がばくばくいってるのが聞こえてしまいそうで、ものすごく恥ずかしい。御門は表情が覗えなくて、何を考えているのか読み取れない。
あっ逸見コノヤロウ爆笑しやがって!覚えてろよ、顔面パワースパイクの刑に処してやる!そう思いながら逸見を睨めば、小さく悲鳴をあげて青ざめた。その瞬間自動ドアが閉まる。逸見に一発かましてやったはいいが、全くもってこの状況は変わらない。廊下の窓から差し込む夕日が赤くて眩しかった。そのせいで御門のぎりぎり見える耳が赤く染まっている。少し抵抗を試みたが、やはり現状打破は難しい。もう何もしても変わらないので、抵抗はやめにした。体力の無駄だ。いつか、こいつの身長抜いたらぼこぼこに打ちのめしてやる。今はまるでゆりかごのような歩く振動に、身を任せて目をつむった。温かくて眠くなる。
「…御門」
「なんだ」
「お前ムカツク」
「知ってる」
やっぱり、好きじゃない。






「…昔の佐久間と源田を見ているようだな」
「源田はあんなに小さく…」
「俺が言っているのは逆だ」

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