パパ | ナノ
子供の成長は早いもので、あっという間に掴まり立ちができる様になり、歩ける様になり、言葉を発せられる様になり、ついには会話までできる様になった。(ちなみに最初に喋った言葉は、"まま"、"かしゅ(かす)"だ…何故"ぱぱ"が入ってねぇ!!!!)

そんなこんなで彩花は3才の誕生日を迎えた。
もうすぐ幼稚園に入る事もあってか、最近はやたらとジジィや家光、跳ね馬までやって来やがる。
そして俺の執務も重なってか、なかなか彩花と遊んでやれていない。だから最近はスクアーロやベルたちと遊んでいるのをよく見掛ける。
しかし今日は違う。まゆはルッスーリアと買い物に出掛け、ベルとマーモンは任務に出かける。スクアーロとレビィは任務の真っ最中だ。ハッカスめッ!!!
だから今日は愛娘彩花と遊べるという事だ。
今日は何をしてやろうか(仕事そっちのけで)考えていると、執務室のドアが小さくノックされた。

「入れ」

そう言うと、小さな体でドアを開け、満面の笑みを浮かべた彩花が小走りで俺の所へやってきた。

「ぱぱー!!あそぼー!!!!」

「あぁ」

抱え膝の上に乗せてやると喜んだ。そして隠し切れていない絵本を抱えて、ニッコリと微笑んだ。

「きょうはなにしてあそぶとおもーう?」

「さぁな??」

「じゃじゃーん!!ごほんよんで?」

「分かった」

こうして彩花の持って来た絵本を読んでやる事になった。シンデレラだ。


「ある日の事です。
…………………

……………

………

……



…………これで終わりだ」



読み終わった絵本を閉じて渡すと、ありがとうと嬉しそうに受け取り、何やら話始めた。

「きょうはだぁーれもいないから、ぱぱといっぱいあそべるね♪」

「そうだな」

「ほんとは彩花、まいにちぱぱとあそびたいんだよー?でもすくあーろが『パパは仕事だからダメだ』って、このおへやにいかせてくれないの……」

そう言う事だったのかッ!!カスめ!!!!余計な真似を……カッ消してやる……

「でもね、ままもおなじこといってたからね『なんでー?』ってきいたんだよ」

「ほぉ」

まさかまゆの名前が出てくると思わなかった俺は、話の続きが気になって仕方がなかった。

「まゆはなんて言ったんだ?」

「んーと、『パパはここにいるみんなのために頑張らなきゃいけないの、じゃなきゃ彩花もママもパパと一緒に暮らせないのよ』って、ままいった」

まるで小さいまゆを見ているかの様な真似をして言って見せた。

「あとねるっすとべるに『まゆはそれだけボスの事好きなんだ』っていわれてた」

「ほぉそうか…」

「でもすくが『でもなぁ、クソボスはそれ以上にまゆの事愛してるぜぇ』って言ったら、ままおかおまっかになってかわいかったよ」

当たり前だ。カス鮫めッ!!コイツらを養うためなら何だってやる。もちろん、今まゆの腹ん中にいる新しい命もだ。

「まゆが可愛くない訳ねぇだろ、俺の妻だぞ?」

「うんっ!!彩花のままだもん」

「フッ…そうだな
……………俺は?」

何気なく聞いてみた。しかし彩花は俺の予想とは裏腹にとんでもない事を言い出しやがった。

「ぱぱー?かっこいいしつおーいよ!!


でも彩花ね、すくのおよめさんになるの」


「なにッ!?!?」


そこは普通"ぱぱと結婚する"って言うのが通りだろがぁぁぁ!!!
とはとても言える訳もなく、固まっていた。

嘘だろ…この俺が、この俺があのカス鮫野郎に負けるなんて………

ド畜生がぁぁぁ!!!!!!




「あれー?ぱぱ?ぱぱぁー」
ザンザスの事を揺するが、動かない。
そして彩花は、回りをキョロキョロ見渡すと、窓の外から聞こえてきた車の音に反応した。


「あ、ままがかえってきたよ!!ままぁー!!!!」


それだけ言い残すと彩花は出て行ってしまった。



「ただいまー」

「まま!!るっす!!おかえりなさぁーい」

扉を開けると元気いっぱいの彩花が迎えに来てくれた。

「ただいま♪」

「うれしいわー♪彩花が迎えなんてね」


「あれ?パパは?」

周りを見渡すといつも娘にべったりなザンザスがいない事に疑問を感じた。

「ぱぱ?彩花とおはなししてたらねちゃったよ」

「んもうーボスったらぁ!!パパと何お話したの?」

体をくねらせたルッス姉さんが尋ねると、彩花はとんでもない事を口にした。

「んーと彩花が
すくとけっこんするってゆったー!!」

そう言い放った我が子の笑顔はとても残酷だった。だから今、固まってる訳ね……

「ルッス、ごめんね…彩花お願いしていい?」

「りょーかいよー♪」

ルッス姉さんも察してくれた様で、あたしは急いでザンザスの所へ向かった。







「まゆです、入ります」

もう了承など得る前に部屋へ押し入った。するとやはり固まったザンザスがデスクにすわったままピクリとも動かなかった。

「ザ、ザンザス!!!しっかりして!!!!」

「まゆか……俺はもう駄目かもしれねぇ」

珍しく弱気なザンザスを見て、娘の言葉の破壊力を改めて知った。そして、あたしはそんなザンザスを抱き締めた。

「大丈夫だよ…もし、ほんとにもしだよ?彩花がほんとにザンザスよりスクが好きだとしても、あたしはザンザスが一番好きだから……
それに何時かは本当に誰かのお嫁さんなるんだよ?今からこれじゃパパ失格だよ」

そう言いながら頭を撫でると、ザンザスはフッと笑った。


「そうだな。彩花はいずれにせよ誰かものになるが、まゆ…お前は俺のものだ」

「はいはい、あなたのものですよ」

さっきまでのギャップにクスクス笑いながら答えると、気付いたザンザスに抱えられた。


「ちょっと!!ダメだって!!」

「散々俺を笑っといてそれか?」

そう言ってあたしにキスをした。

「今日はこれで勘弁してやる」

まゆは文句を言いながら、頬ほんのりと顔を赤く染め、ボソリと呟いた。


「…………ザンザス大好き」


「…俺は、愛してる」



パパ大好き!!

(ねぇ、彩花)
(なぁに?るっす?)
(なんで"スクと結婚するー!!"なんて言ったのよ)
(だってぱぱにはままだけをずぅーとすきでいてほしーの!!)
(まぁ!!なんてかわいいのッ)
(そんなぱぱがだいすきなの!!)
(あら、今の言葉ボスに伝えなきゃ♪)
(えへへ、べつにすくじゃなくてもよかったんだよー)

(流石あの2人の子供だわ…)

2010/11/20

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