パパ | ナノ
「どうしよう、どうしよう!!」

「落ち着いて、まゆ!!!」

数日前から具合が悪く、寝込んでいた。なかなか熱がひかないので、病院へ行って来た途端この様子だ。

城内を走り回ろうとすると必死に止めるルッス姉さん。
あたしを無理矢理談話室に引きずり込むと大声で叫んだ。



「みんなー…まゆがおめでたよ〜〜〜ん♪」



「ぶぅーー!!!」

そこに居たスクアーロは思わずコーヒーを吹き出した。それをうっわ、きったねぇと避けたベルは、こちらに向かって歩いて来た。


「ここに赤ちゃんがいる訳?ししっ」

癖のある笑いをしながら、あたしのお腹を擦る。

「ムッ…まゆが母親になるのかい?想像できないよ」

「もう!!ちゃんとなれるもん!!」

口では毒を吐きながらもあたしの腕の中に収まって、一人…ガラガラは、木馬はどうだこうだと喋っていた。



「うぉ゛ぉい、本当か?」

目をまん丸くしたまま、こちらにやってくるスクアーロ。

「こんなとこで嘘なんかつかないよ」

と言って微笑むと少し顔を赤らめてお腹に手を当てた。

「ここに居るんだなぁ…」

「うん」

そう答えると、スクアーロの後ろから硝子のコップが飛んできた。

「うお゛ぉ゛ぉぉぉい!!!痛テェぞぉ!!!!ボス!!!」

んもうーというルッス姉さんの声と共に現われた、ヴァリアーのボスであり、あたしの旦那様ザンザスである。
どうやら寝起きらしく、すごい形相でスクアーロを睨み付けた。

「うぜぇ」

「なぁ゛!!!!」

ゴンッと凄まじい音の中、スクアーロは床に叩き付けられた。

「ちょっと!!ザンザスッ!!!!」

ひょいっとあたしを肩に抱えると、また自分の部屋の方へ歩き出した。

「カスが…俺の物に触るからだ」

フッと鼻で笑うと、何事もなかった様に談話室を後にした。



みんなは、ほっとしていたが、ルッス姉さんだけは「今日はお祝いよ〜」とやけに張り切っているのがみえた。

「体調は戻ったのか?」

「えーと、一応は…ね?」

「…?まぁ今日は大人しくしてろ」

部屋と言うか、執務室に着くと、大きなベッドの上に寝かされた。
丁寧に布団までかけると、いつものザンザスではないくらい優しかった。




「あのね…ザンザス、大事な話があるの……」

「なんだ、いきなり」

「もし…もしだよ?あたしのお腹に赤ちゃんがいるって言ったらどうする?」



「……………」


「……………」


あたしは俯いたまま、ザンザスの顔が怖くて見られない…もし拒絶されたら?下ろせって言われたら?そんな事ばかり頭を過ぎる。


「ハッ、そんな事か」

「そんな事じゃないもん!!」

「まゆ…お前は死んでも俺の女だ」

「ザンザス…」


「愛してる」

照れくさそうに言うと、あたしの横に腰かけ、おでこにキスをした。


「ありがとう」

あたしはうれしくてうれしくて涙が止まらなくなった。

「フッ、そんなんで母親か」

「全部ザンザスの所為だからね!!もう〜」


手で涙を拭って立ち上がろうとすると、ザンザスによって阻止された。

「動くな、寝てろ」

「ちょっと!!洗濯とかはどうするの?ルッスねえさ「そんな事はしらねぇ…分かったら寝てろ」

再び、あたしをベッドに寝かせ、布団をかけるとデスクの方に戻って行った。

「……無茶すんな、まゆ」



パパになります!



(ザンザスの照れ屋さん♪)
(…カッ消すぞ?)
(はーい♪あたしも愛してるよ)
(フンッ当たり前だ)


2010/09/04

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