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あの日から、何事も無かったかの様に周りは過ぎていっているけど、あたしは少し違った。

一番大きな事と言えば、任務の報告にボスの所に行く時、任務での汚れをシャワーで流してから行く様になった。
相変わらず無愛想なのは変わりないけど、せめてもの悪足掻き。こんな事でボスの気が魅けるなんて爪の甘皮程も思ってないけど…


「失礼します、まゆです」

返信がないのはいつもの事なので、少しだけドアを開ける。
自分を一瞬疑い、一度ドアを閉め頬を叩いてみたが痛い。目の前で起きている事が事実だという証拠に頬の痛みが残った。

深呼吸をし息を整えてからもう一度ドアを開ける。
やっぱりっと思いながら一歩ずつ近付いてみたが間違いではなかった。
ボスが寝ているのだ。どっかりと椅子に腕を組んだまま腰掛け、スースーて静かに寝息をたてている。
いつもなら起きているが、よっぽど疲れているのか、たまたまなのか分からないが寝ている。

デスクのすぐ側まで歩み寄るとさっきよりもボスの顔がしっかり見られた。長い漆黒のまつげや整った鼻筋、ちらりと見える鎖骨など男の人なのにとても綺麗だった。女の自分がとても惨めに思えた。

「ボス…こっち向いて欲しいなんて言わないから、この思いだけは許してね」

この間の言葉なんてただの気まぐれだったかもしれない…
でもあたしのこの思いだけは本物だから、やれるだけの事は全てやろう。


一度自分の部屋に戻るとソファにかかっているブランケットと沸しておいたコーヒーを持ってボスの所に戻った。
ブランケットをかけ、メモと一緒に報告書をコーヒーの注がれた彼のマグカップの下に置いて一礼してから部屋から出た。



ツンデレ娘の精一杯

「うぉぉおい!!クソボス!!!!帰ったッぶへ!!!!」

「ッるっせ」

「なにすんだってなんだぁ?そのブランケット」

「あ"?」

「ん?どうやらまゆらしいぞぉ…(アイツも可愛い事するじゃねぇかぁ)」



2012/09/21



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