re-short | ナノ
真っ黒なコート
真っ黒なブーツ
真っ黒なスカート
そして銀色に輝く身の丈程の愛刀を片手にあたしは今日も真っ赤な飛沫を浴びる。

ザシュッ

今日26体目の屍を転がすと、奴は現われた。

「今日はこれで終いかぁ?」

漆黒の闇になびく銀色の髪。その髪はとても男性のものには見えない。

「スクアーロ……そう。終わり」

わざわざ任務でもないスクアーロが迎えに来るなんて思い当たる事はひとつだ。

「……ボスがお呼びだぜぇ」

ほら…ね

小さな声で呟いたのに、スクアーロには聞こえたらしく、眉尻を少しだけ下げてあたしをちらりと見た。


さっきついた返り血を拭う暇もなく、車に乗り込むとスクアーロはエンジンをかけ発進させた。
今日は綺麗な満月だから部屋でゆっくりしようと思っていたのに、これじゃ自室に戻れるかさえ分からない。
そんな事を考えながら車に揺られ、アジトに戻る。
窓から見る月はうっすらと地面を照らしとても幻想的なものだ。


最初からこんな風ではなかった。
ザンザスは確かにあたしの恋人であった…でも変わってしまった。あの"ゆりかご事件"を期に……

8年という長い時をあたしは待っていた。そして、冷たい氷の檻から出て来た時は、感極まって涙を流した。

「着いたぞぉ…まゆ。」
スクアーロにそう言われ、車から降りると目に入った月はさっきまでとは姿を変え、厚い雲がかかり少し隠れてしまっていた。

その場から去ろうとすると、不意にスクアーロに腕を掴まれた。

「何?」

「お前が、まゆがつ
「言わないでッ!」

手を振り払ってスクアーロに背を向ける。

「スクアーロが思ってる程あたしは頭が良くないの。どんな形であれザンザスの隣りにいたい。」

「……それがあたしが望んだ事だから…」


彼が何か言いた様な感じだったが、それも無視して足早にザンザスの元へと向った。きっとスクアーロの事だ。あたしやボスの事を心配して言ってくれてるのだろう。それを分かってなおザンザスの隣りに居続けるあたしは相当キていると自分でも思う。


無事ザンザスの部屋の前に着くと、ノックをすると入れと返信が返って来た。

扉を開けると同時に生臭い匂いとエプロンが真っ赤に染まったメイドさんを見つけた。

「任務完了しました。」

「遅ぇ」

「申し訳ありません。今回は、」

「黙れ。言い訳はするな」

そう言い終えるなり、あたしの首を抑え、絨毯に押し倒した。

「ごっ…め」

「覚悟出来てんだろうな、まゆ」

その言葉に目をぎゅっと瞑ると始まった。


初めに腹部に強烈な痛みを感じると、場所を関係なく殴る蹴るなどの暴行は当たり前。酷い時には死なない程度に内臓が破裂したりする。

こんな事止めなければならないのは分かってる。でも、暴力をふるうザンザスもとても苦しんでいるのが分かってしまうから、耐えようと思ってしまう。

「好き……、よ…ザ、ザス」
意識が遠のいていく中、俺もだとザンザスが言って気がした。





目を覚ますとそこは医務室だとすぐ分かった。

「まゆ」

声の方に目をやるとルッス姐さんがいるのが分かった。

「ね、さ…」

「無理に話しちゃダメよ?内臓幾つか潰れちゃってるって話だから」

力なく頷くと姐さんは優しく微笑むと話を続けた。

「晴の炎で少しは治す事ができるからって、あんまり自分の身体を粗末に扱っちゃあダメよ?まゆ、あなた女の子なんだから」

「あ、たし…は」

「そんな事してないって?このままじゃ、ダメになるわよ?任務なんて回してくれなくなっちゃうわ!そしたらあなたもボスもダメになっちゃうわよ?」

「分かって…る、でも、ボス…の、とな、り…に、いたい」

ふと視界がぼやけ、自分が泣いてる事に気付いた。
辛いと言えれば楽なのに、痛いと言えれば楽なのに、あたし達はそうする事が出来ない。
ボスもあたしも…



無限ループ


ルッス姐さんの頭を撫でてくれる手がやけに暖かく感じた。


2012/11/19


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