re-short | ナノ
「……まゆ、いい加減に起きろぉ…」

小鳥の囀(さえず)りと濁音混じりのスクアーロの声が聞こえる中、あたしは目が覚めた。
今まで暗かった視界に太陽の光が目に入り自然と眉間にしわが寄るのが分かった。

「んー…あと3分」

「うぉ"ぉぉい!!今日は買い物に出かけるって言い出したのはお前だろぉーがぁ!!」

朝からとんでもないボリュームで話す(この場合は怒鳴る)スクアーロはあたしのくるまっている布団をバサッ剥いだ。それでもあたしは起きようとしない。寝返りをうち、反対側を向くときちんと畳まれたスクアーロの布団に手を伸ばした。

「う"ぉ"ぉ"ぉぉい!!!まゆ!!!!いい加減にしろよぉ"。今日アイスおごってやんねぇからなぁ"!!!!」

ぴくり

「それが嫌ならちゃんと起きろよぉ?」

「んー…………起きた、よ」

アイスクリームが大好きなあたしにとってスクアーロの言葉は聞き逃す訳にはいかなかった。
だるい体を伸ばし目を擦り欠伸をひとつすると、もうすっかり準備をし終わったスクアーロと目が合った。
ところが彼はタオル片手にクツクツと口元を押さえて笑っている。

「スクアーロー………どうしたの?」

あたしは寝起きの所為か何が起こっているのかちんぷんかんぷんで、再び半開きの目を擦りながら彼に訪ねた。


「くくくく…お前の寝起きスッピン酷ェと思ってなぁ"」

「は?」

「そんな目してっとジャポーネの"ヤンキー"とかと変わらねぇぞぉ…くくく」

「…………」

「(やべぇッ!!まゆのスッピンについてはNGだったぜぇ!!!!)」

「スクのバカァァァ!!!うわ〜ん!!!」

あたしはスクアーロを押し倒すと、部屋の入口へ猛ダッシュした。ルッス姉さんの所に行こ。スクアーロがよりによってあたしの一番気にしてる事を言ったって。慰めて貰おう。

そう考えながら扉を勢いよく開けると、後ろからスクアーロに肩をがっちりと掴まえられ、進めなくなった。

「うわ〜ん!!!スクのバカバカバカ!!」

「う"ぉ"ぉぉぉい!!まゆちょっと黙れぇぇ!!クソボスに殺されるぞぉぉ!!!」

「いいもん!!あたしはそんな事されないもん!!スクなんか死んじゃえ!!」

「お前…いい加減に、しろよぉ」

扉には鍵が掛けられ、あたしは入口でスクアーロに組み敷かれている状態だ。
あーあ…あとちょっとだったのに。

「スクが悪い。調子になんか乗ってない。」

「う"…」

「だって全部スクの所為じゃん。……しょうがないじゃんあたしは……不細工だもん」

改めて自分で言うと痛感する。あたしはスクアーロと違って顔立ちが整っている訳じゃない。何より一重瞼の小さな目はあたしにとって何よりもコンプレックスだった。
涙が視界を歪ませ、目からたくさん溢れ落ちる。スクアーロは困った様子であたしの方を見ているが、そんなの今は無視だ。
スクアーロに分かってたまるか。一重瞼のあたしの気持ちを…

すると突然スクアーロがあたしの上から退いた。そしていつもよりも優しくふわりと抱き締めてくれた。


「すまねぇ…お前が、まゆが、そんなに気にしてるって思ってなかったんだぁ……」

そう言いながら涙を拭ってくれる。一人であーだこーだ言いながらもあたしに謝ろうとしているスクアーロはとても愛しかった。

「いいよ、分かってくれたならそれで…あたしも酷い事たくさん言ってごめんね」

「お、俺は気にしてねぇぞぉ、いつも事だからなぁ"!!」

そう言って顔を見合わせて微笑むと、あたしはスクアーロからタオルを貰って洗面台に向う。


でも毎回鏡の前に立つと思う。
この顔がもう少し美人だったらと。そうならば自信を持ってスクアーロの隣りにいられるのに……

「はぁ…整形しようかなぁ」

洗顔する様に髪を留め、石鹸を泡立て顔を洗う。そして泡を流し終わると、タオルを持ってスクアーロがいた。そしてありがとうと一言言うとそのタオルを受け取った。


「物騒な事言うんじゃねぇ"……」

「何が?」

「整形がどうだとか言ってたじゃねぇかぁ」

「うん、でも目を二重にするだけだよ?」

「………そんな事するなぁ」

「なんでよ?スクアーロだって美人連れて歩きたいでしょ?」

そう言いながらタオルを投げ付けるあたしは全然かわいくない。八つ当たりしてるのも見え見えだろう。

「お前はそのままが一番お前らしいと思うぜぇ」

「は?さっきはスッピン笑ったくせに…何がいいたいの?」

「俺は化けたお前も、スッピンのお前も、わがままなお前も、どんなまゆでも好きだぁ……だからそんな事言うなぁ」

思いがけない言葉にあたしはペタンと床に座り込んでしまった。

「なによ…スクのバカ…」

「うぉ"ッ!?なんでそうなるんだぁ!!」

「だって、びっくりしたもん…そんな風に思ってくれてるなんてさ。あたし幸せだなって……ありがとうスクアーロ」

「おう…」

スクアーロは顔を赤らめながらあたしに手を差し出し立たせてくれると、ギュッと抱き締めてくれた。


自信を持って


「まゆは整形なんざしなくても、十分かわいいぜぇ?」

「……バカ」

あたしは照れ隠しでスクアーロの胸に顔を押し付けた。こんな事してもスクアーロには全て御見通しなんだろうけどね…


2011/03/21

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