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明日からボンゴレ本部へ任務に出かける私はせかせかと荷物の準備をしていた。
今回の任務はスクアーロと一緒で、後から山本くんと獄寺くんと合流予定。

荷物や武器を運び屋に預ける手続きを済ますと、ルッス姉さんの作ったケーキとボス専用のブラックコーヒーをカップに入れてドアをノックした。

「ボスー、コーヒー持って来たよー」

「あぁ」

ボスのデスクに熱いコーヒーを置くと、ソファに座りケーキを食べようとしたが、視線が痛い…
パッと目を向けるとボスの紅い瞳はあたしをしっかりと捕らえ、離そうとはしてくれなかった。

「な、何?あんまり見られると食べ辛いんだけど…」


「…まゆ」

ボスが名前を呼ぶと、あたしはソファから立ち上がりケーキを持ったままボスの上に座った。

「座れとは言ってねぇ…」

「だってもう出発しなきゃいけないもん」

ケーキを一口大にフォークで切り分けると、あたしはそれを自分の口に運び、ボスのコーヒーに口を付けようとしたが、まだ濛々と湯気が上がっていたので再びケーキを口に運んだ。
猫舌のあたしにはそんな飲み物を飲む事は地獄と同意なのだ。


「…テメェはガキか」

「へ?」

それだけ言うとボスは手を伸ばしあたしの頬のクリームを取り自分の口の中に入れた。

「ッ!?」

「めっちゃ甘いでしょ?ルッス姉さんがあたしのために作ってくれたんだよ♪」

ボスは目を見開き、コーヒーに手を伸ばす。

「…食いもんじゃねぇ」

「甘い物食べてエネルギー補給しなきゃやっていけないの。あたしは」

「フン、まぁいい…それよりコーヒー飲みたいんだろ?」

「あ、うん…」

そう言うとカップに口を付け、フーフーと冷ましてくれる。普段なら絶対しないのに、今日はどうしたのか。

「ほらよ」

「あ、ありがとう」

行儀が悪いと知りながらもズズズズとコーヒーを啜る。本当に冷めてる事に驚きながらも、なおコーヒーを啜った。
するとボスがいきなり腰に手を回し、抱き締めてきた。

「ボス〜?今日どうかしたの?」

コーヒーを零さない様にデスクに置くと、会話を続けた。

「…………」

「言ってくれなきゃ分かりませーん」

「………んだよ」

「は?」

「………お前を…行かせたくねぇ…」

「ッ!!」

普段なら任務のためなら手段を選ばないボスが行くなと言った事よりも、こんなに弱ったボスを見たのに驚いた。

「もしかして、嫉妬してるの?」

「……うるせぇ」

否定はしないという事は、その言葉は肯定を意味する。いつもはあたしの事を馬鹿にして部下をいびるボスも、やっぱり一人の人間である事を実感させられた。
あたしも幹部であるからには任務をサボる訳にはいかないが、こんなボスはもうずっと見られないと思うと、胸の奥がキュンとして、任務の事なんて吹っ飛んだ。


「行かないよ…ボスが行くなって言ったから行かない。ずっとここにいる」

あたしは体を反転させて、ボスの方を見るとギュッと抱き締め返した。

「それでこそ俺の女だ」


ボスはふっと意地悪な笑みを浮かべると、あたしの額や頬にたくさんのキスをした。

そんな空間にスクアーロが入って来るまであと5秒。


たまには…ね

こんなボスもいいなと思ったのは内緒にしておこう。

(う"ぉ"ぉぉぉい!!クソボスゥ!!まゆは今から任務ッぶへぇ)
(うるせぇ、まゆは行かせねぇ。テメェだけで行け)
(なにィ"!?)
(テメェで誰か連れて行け、カス)
(んなぁ"ッ!!!)



2011/03/06

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