「ねぇ、」


殺してもいい?





crazy love





「え…?」


答えなんて、聞かないよ。だって俺王子だし?


「や、やだ…何言ってんの、ベル…」

「大体、王子を呼び捨てにすんなよなー」


 そう笑いながら、一歩づつ女に近付く。

 しし…いいね、その恐怖に歪みきった顔。他は最悪だけど、その顔だけは一級品じゃん。

 じゃ、その顔のまま…


「死ねよ」


 構えるでもなく無造作に女の上に持ってきたナイフを、離した。四方八方に飛び散った血の紅さが、嫌に目立っていて。なんだか、すごく、興奮した。









 あー、今回の女もつまんなかった。コイツもいいのは顔だけだったし。どっかに面白くていい女いないかな…あ、女に飢えてるわけじゃないから。俺王子なんだから、言い寄ってくる女なんて掃いて捨てるほどいんの。

 でもさ、なかなかいないんだよね。


――ガチャッ


「ベル、また殺したの?」


 コイツみたいな……First nameみたいな、イイ女。


「しし、まーね。コイツもつまんなかったしさ」

「全く…そんな理由で次々殺してったら、世界から女性が消えちゃうわよ」


 呆れた感じで溜め息を吐くFirst name。そのセリフ、一昨日も聞いたな。てことは俺、一昨日も殺したんだ。ふーん…まぁ、殺したヤツなんかに一々興味なんて持たないけど。


「気に入らないからって殺すなら、最初からやめればいいのに」

「だってFirst name、俺のものになる気ないんだろ?ならしょーがないじゃん、他で代用……つっても、ダメだから結局殺すんだけどな」

「……なら、私がベルのものになったらこんなこと、やめてくれるんだ?」

「しし、なるんならね」


 ま、こんなこと言ってもコイツは俺のモンになる気なんか、サラサラないんだろうけど。でも変なところでお人好しだし、上手くいけば上手くいくかも、なんて。なんて、そんな方法で手に入れても、嬉しくない。

 王子なんだから、望めば何でも手に入ったし、望まなくとも手に入るものもあった。手に入らないものも力づくで奪った。それで満足だった昔が懐かしい。

 今だってそれで満足なものもある、てか、大抵のものはそれで満足。結果的に俺の所有物になってれば、それで満足。

 でも、コイツは。何故だか知んねーけどコイツだけは、力づくで手に入れたいとは思わない。コイツにも俺を、求めて欲しいと思う。

 俺、一体どうしちゃったんだろ。


「…分かった。私、ベルのものになるよ」

「…え?」

「ね、だから、こんなことやめて?私、ベルにこんなことしてほしくないのよ…」


 なんだって。ねえ、お前、俺のこと、どう思ってんの。俺のことが好きだから、俺のものになってくれるの?違うの?

 ねえ、違うなら、今は手にいれたくない。


「…いやだ」

「…ベル?」

「お前、俺のこと好きじゃないだろ。そんな仕方ないみたいな感じで王子のもんになられても、満足できない」

「…じゃあ、どうしたらいいの」


 そんなの、簡単じゃん。俺がお前に望んでるものが何なのか…もう、分かってるんだろ?


「俺のことを、好きになれよ」





くれいじいらぶ





 なあ、早くしないと、また一人、死んじゃうよ?







ミルフィーユもいつか書きたい
ベルは私の中で“狂ってる”の象徴的存在

100429
140311 移動