「音無先生には、あたしの気持ちなんて分かりません」

「狩屋さん…」

「先生とコーチも孤児院出身だって、ヒロトさんから聞きました。でもそれって、ご両親が亡くなられたからですよね。そうでなかったら孤児になんてなってはいなかったんですよね。あたしは違います。あたしは捨て子ですから」


「あたしはこれまでに四回捨てられました。最初は産まれてすぐ。次に三歳の時。次が七歳の時。最後は九歳の時です。

 最初はゴミ捨て場に捨てられていたそうです。半年後に養子に貰われて、家計が苦しくなったとかで捨てられました。

 また半年後に養子に貰われて、始めの一年くらいは普通の家庭だったんですけど、気付いたら虐待されてました。入学したきり学校には行かせてもらえず、食事もろくに与えられないまま暴力だけ満足すぎるくらい奮われて、あたしは死ぬ寸前で役所に保護されました。

 それからすぐ引き取られて、半年もしないうちにお日さま園に連れてこられました。雨の日でした。私はまた捨てられました。お日さま園に入ったのはこれで二度目で、初めは三歳で捨てられた時。こんなことになって戻ってきたのはあたしが初めてみたいでしたけど」


「ねえ先生、先生に分かるはずないんです。親の愛を知ってる先生には、血が繋がってなくても家族を知ってる先生には、絶対、分かるはずないんですよ」


 こんなにも虚ろで空っぽで真っ暗な目を、私は知らなかった。





平等なんてどうせ幻想







だって結局今も私には家族なんていませんし。

運の悪い狩屋ちゃん。霧野くんに幸せにしてもらう前で力尽きた。
ので、幸せにはなれません。

120707
加筆修正 131021