「今日はこの前の中間の解説するけど、皆問題持ってきた?」

「はい!忘れました!」

「私も忘れました!」

「あ、俺も忘れました!」

「(3バカが…)」

「…元気がよくて大変宜しい。正直なのも好評価ですね。前に来なさい、予備があるから」

「「「はーい」」」

「貴方たち、前の期末の時も忘れてたでしょ?ダメよ?次の期末にはちゃんと忘れずに持ってくること。…見直しをしないなら、いっそのことロッカーの中に置いていきなさい」

「なるほど!」

「さすが先生!」

「ていうか今まで何で持って帰ってたんだろーなー」

「皆はちゃんと持って帰って見直しをして、また持ってくるのよ。分かっていると思うけれど、貴方たち受験生なんだから」

「(ごめんなさい先生ホントそいつらバカでごめんなさい)」

「気を取り直して、まずテストを返します。番号順に呼ぶから取りに来てね」



「石川くん」

「はい」

「はい、もう少し頑張りましょうね」

「あー…」

「ここの、文学史のところ、貴方弱いでしょう。いつもここで点数を落とすわ。逆に言えばここをしっかり覚えれば良くなるから、次は頑張りましょうね」

「はーい」

「あと、今回は特別登場人物の心境を答えるところができていなかったわ。まあ、ここは難しかったから、みんな正解率が低かったけれど……例えばここ、『この時の御嬢さんの気持ちを答えなさい』。分からなくても空白にしておかないことはとても素晴らしいのだけど、『そんなの俺が知りたい』は止めた方がいいわね。もっと当てに来なさい」

「…けど先生、俺にはもう女子がよく分からないんです…特に吉川」

「吉川さんはこの問題正解だったわよ」

「ああ、もう益々分かんなくなりました」

「補習はギリギリ大丈夫だと思うけど、プリントを出しますからね。それをやればきっと、御嬢さんの気持ちも吉川さんの気持ちも分かるようになるわ、きっと」

「はい…」



「堀さん」

「はい」

「はい、よくできました。学年順位はまだ出ていないけれど、クラス順位は一位、私の受け持っている中では二位よ。よく頑張ったわね」

「わぁ、ありがとうございます!」

「その調子であの三人の点数をもう少し上げてくれると助かるわ」

「…先生、それは、その、ですね」

「暗記と対策のためのプリントを作るから、それだけ、それだけは絶対に覚えさせてちょうだい。15点は上がるから」

「頑張ります……すみません…」

「いえ、先生がしっかりと見れたらいいんだけどね……」



「宮村くん」

「はーい」

「はい、もっと頑張りましょうね」

「うわー」

「宮村くんは、そうね、漢字が、いえ漢字も苦手ね。堀さん、ちょっといいかしら」

「はい」

「宮村くんの漢字の書き取り力なんだけれど、どれくらいかしら。中学くらい?」

「いえ、小学校高学年レベルです」

「…分かりました、宮村くんには漢字のプリントを追加するわね。毎日一枚ずつ頑張りましょう」

「すいません、お願いします」

「あとは接続詞もよく分かってないみたい。作文の練習もしましょうね」

「いやあ先生、いくらなんでもできますって」

「“ただ”、の後に続く言葉を考えてみて」

「(“ただ”の後には“〜だけ”がくるのよね)」

「ただ…ただ、あ!ただは安い!」

「………」

「………」

「………先生、宜しくお願いします」

「そうね、事態は思っている以上に深刻だったわ」

「え?あ、そっか、ただは安いっていうか、ただだもんね!」

「黙って宮村黙って」

「宮村くんは補習がありますからね。日にちは後日お報せするけど、絶対に出席するように。堀さん、頼んだわよ」

「任せてください。紐でも付けてひっぱってきますから」



「吉川さん」

「はーい」

「はい、今回はいつもより良かったわよ」

「え!え、あ、ホントだぁ!」

「登場人物の心の機微をよく捉えられていたわね。ここ難しかったみたいで、皆あまり正解できていなかったのよ」

「えへへっ」

「でもそれ以外は危ないから、プリントを出しますね。補習も、ギリギリ大丈夫かもしれないけど…出られる余裕があったら出ましょうね。基礎が危ういわ」

「はーい」



「渡部くん」

「はい」

「はい、よくできていると思うわ。でもね、先生一つだけ気になることがあるの」

「なんですか?」

「この『私の興味があることについて答えなさい』の問題なんだけどね。この“私”は登場人物の一人称であって、渡部くんではないのね。それと、その答えが『宮村くん』っていうのは、ええと、その…」

「先生、その通りです」

「…そうね、うん、生徒の自主性は大事だと思うわ。次からは登場人物についての答えを書いてくださいね」

「はい」



「はい、それでは解説の方に移りたいと思います」

「あ、先生、平均はいくつですか?」

「ああ、まだ全部は出ていないのよ。でも、そうね、井浦くんが67点だったからその前後だと思います」





ノーモアテスト







最後の井浦くんのくだりをを書きたかっただけ。便利な平均男・井浦くん

120707
加筆修正 131021