「嫌、嫌、ぜーったい嫌なのです!」


 穏やかな昼下がりに、突然やってきた私と兄様の上司は、不躾に無理難題を押しつけてきました。せっかく兄妹水入らずでアフタヌーンティーを楽しんでいたのに!


「そこを何とか頼むよ!これを気に他の国とも交流を深めたいし…」

「そんなのはそっちで勝手にやってくれればいいのです!私には兄様とシーくんがいればいいのです!」


 わがままなんかじゃないのです。だって嫌なものは嫌なの!


「とにかく、私は絶対に結婚なんかしないですからね!」

「もう、アメリカくんのどこが不満なんだい?」


 どこが不満ですって!そんなの……そんなの!


「眉毛に決まってるですよ!同じ結婚するなら、アメリカさんなんかより香くんの方が数百倍いいです!」


 香くん…香港くんとは、なかよしなのです。一緒に住んでたこともあるし、何より素敵眉毛ですし。とにかくとにかく取り敢えず!アメリカさんとは結婚したくないのです!


「First nameお姉ちゃん…結婚しちゃうですか!?」

「シーくん…」


 ギューって、腰辺りに抱き着いてくるシーくん。背はまだ私の方が少し高い。逃がすまいとしてるのか、なかなか手を緩めてはくれない。

 うん…やっぱり、こんな可愛いシーくんを置いてお嫁になんか行けないですよね。てか、行きたくないのです!


「大丈夫ですよ、シーくん。お姉ちゃんはどこにも行かないから、ね?」

「残念だったねシーランドくん!First nameにはアメリカくんと結婚して貰います!」

「黙れ悪党」

「あくとっ…!……まぁいい、君にも国民にもなんと言われようが構わないだがしかし!アメリカくんとは結婚して貰うよ」

「嫌だって言ってるじゃないですか!ていうか結婚は両人とも承諾してないとダメなんですからね!」

「うん、だからしてるじゃない。僕とあちらさん」

「お前だけじゃねぇかよ」

「えー、いいじゃん、未成年は保護者の承諾がないと無理なんだし?イコール僕とあちらさんさえよければ成立」

「してたまるかボケ!未成年てなんだ未成年て!私はお前の数百倍生きてるし、ぶっちゃけアメリカさんよりも歴史長いんだよ!」



「イギリス…First nameお姉ちゃんどうしたですか?」

「……悪い癖が出たんだ。海賊時代の、淑女(レディ)になる前の悪い癖が…」



「大体!私はいつまでも引き籠もってたかったんです!外交なんてしたくない、私にはお兄ちゃんたちがいればそれでよかったんです!」

「それだけじゃ今の時代、生き延びれないんだよ!」

「だからと言ってよりにもよってアメリカさんを選ぶことはないでしょう!?せめて日本さんだったなら…!」

「そんなこと言われてももう遅いよ!僕の手元にはほらこの通り、印の押された婚約届が…」

「お前なんか灰になればいい!鎖国……もう一度鎖国してやる!」

「ちょ、First name!?お前何言って…」

「兄様とシーくんと香くんと日本さん以外は家に入らないでください!イコール上司出てけ!あ、兄様の上司さんはゆっくりしてってくださいね」







ロンドンにしようかと思った

110815