のっとばいたるえもーちょん





 小さい頃、神童と呼ばれた。素晴らしい才能だと大人たちが持て囃す。私には出来て当たり前のことを、この人たちは褒めちぎる。変な人たちだ。小さい私は周りを異質な目で見た。

 小学生の頃、天才と呼ばれた。唯一無二の才能だと大人たちが持て囃す。私には出来て当たり前のこと以下略。小学生の私は本格的に周りを気持ち悪いと思った。

 中学生の頃、異端児と呼ばれた。人間にはありえない恐ろしい才能だと誰もが恐れおののく。私には出来て以下略。私は出来ることを普通にやっているだけなのに、訳が分からない。どうして私が出来ることを、みんなには出来ないのか。中学生の私は人間なんて自分勝手だと見下した。


 一般論として、私は人間ではないらしい。今のところ異端な化物という位置付けだけど、また数年後には変わっているかもしれない。

 17年間生きてきて、友達がいたことはない。昔も今も人は遠巻きに私を見ているだけ。親や親戚は最初こそ私を使って金儲けしていたものの、途中で気味が悪くなったのか残らず逃げた。

 寂しいと思ったことはない。元々いてもいなくても変わらない存在だった。ならいない方が楽でいい。事実、親がいようといなかろうと私の生活は何一つ変わらなかった。


 未来が観える。頭の中に人の数だけスクリーンがあって、それを眺めている感覚。その膨大な量の情報に小さい頃は押し潰されそうになったけど、最近はもうそんなこともなくなった。それでも人の生を観るということは、いつまで経っても苦痛だ。

 今起こっていること、これから起こること、すでに起こったこと。そのすべてが漏らすことなく頭に浮かぶ私は、人の綺麗なところも汚いところも全部観てきた。子猫を拾った、浮気をした、席を譲った、万引きをした、ボランティアをした、人を殺した。全部、観て、私は思い知った。


“人は醜い”


 清濁合わさるなんてレベルじゃあない。清い人が綺麗で濁った人が汚いわけじゃあない。人はみな、少しの清さと他は濁っているのだ。全て清い人などいない。全て濁った人などいない。いるのはどちらかといえば濁った人間、それだけだ。こんなこと知りたくなかった。私には耳と目が人の数だけあった。



「黒神には分かんないよぉ。いくらお前でもさぁ、アタシみたいなことはできないでしょぉ」

「そう…ですね、私にはできません」

「行橋はさぁ、都城の傍にいれば〜とかって便利な感じでぇ一応治まってたじゃん?制御面的なのも合ったしぃ。でもアタシにはさぁ、そういうのもないわけぇ。ぜぇんぶ、筒抜けぇ。逆サトラレ、ただし感動秘話はありませんみたいなっ!」

「先輩、それが言いたかっただけですよね」

「あっはぁ、もしかしてぇ人吉もアタシと同じぃ?なぁんてねぇ」

「…めだかちゃん、本題に入ろうぜ」

「あ、ああ…改めてみょうじ先輩、貴女に伺いたいことがあります」

「うん、なぁにぃ?知ってるけどぉ、一応聞いとくねぇ」

「みょうじ先輩。貴女のその能力は一体、どの範囲まで効果が及ぶのですか?」

「…えぇー、えっとぉ、こっからぁ、こことこことぉ、そこまでぇ。つまりぃ、ぐるっと地球一周分」

「で、時間は」

「今とぉ、昔とぉ、これからぁ。つまりぃ、ぜぇんぶみえちゃうわけぇ。黒神の過去もぉ、人吉の未来もぉ、ぜぇんぶさぁ。お前らどぉなるかぁ、教えてやろぉかぁ?」

「いえ、それは結構です。もっと他に、別の用件があってきたのですから」

「ふぅん、つっまんねぇなぁ。いや知ってたけどぉ。でぇ、なんなのさぁ?知ってるけどぉ」

「安心院なじみについて」



「あれの過去はぁ、なっがいよぉ。人類の歴史なんてぇ目じゃないしぃ、地球の歴史よりもなっがいしぃ。でも面白みはないかなぁ」

「面白み?」

「そぉそぉ、アタシのみえるのってぇ、その人の記憶だからさぁ。人吉は分かるだろぉ?あれの視界のぉ、不愉快さがさぁ」

「…あの、総てのものを平等に見ている視界のことですか」

「それぇ、堪んないだろぉ?なぁんも面白くねぇの。だからぁ、そぉだなぁ。あれのことが知りたいんならぁ、そのことを覚えとくといいよぉ」

「そのこと?」

「あれにはぁ、良くも悪くもぉ有機物も無機物もぉ、みぃんな等しく映ってんのぉ。それぇ、伏線だからぁ。アタシが言えるのはぁ、ここまでぇ」



「あんな感じでよかったぁ?」

「ああ、完璧だよ。さすがぼく」

「あっはぁ、末端の子たちも大変そぉだけどぉ、中枢も大変ってゆぅかぁ」

「…そろそろ覚悟は出来たかい?」

「んんん、まぁそぉだねぇ。どぉせ人間じゃぁないってんならぁ、人外になるのもぉ、悪くはなさそぉかなぁ」

「じゃ、君も今日から悪平等。ね?」

「うぅん、いいけどぉ、アタシは不知火みたいにぃ安心院にいっつもひっついてたりできないよぉ?」

「…それはいいよ、別に」

「そぉ。ならいいやぁ。べっつにぃ、特に何も変わったりしないしねぇ」







もっと続くはずで、もっと間に話があるはずだった。でももう力尽きた

のっとばいたるえもーちょん
バイタル=生命、生きてる
エモーション=感情、情緒
生きてる意思はない
死んでる感情  etc. 全部曲解ですが

○○、ただし○○みたいなっ!は戯言ネタ。夢主の能力モデルは戯言の占い師。サトラレ懐かしい。
夢主はあじむです。あんしんいんとは呼びません。安心院さんの方も諦めたようです
あと夢主の喋り方がうっぜぇのは、他人の神経を逆撫でするためです。効果は抜群だ!

ちょっとだけ
狭心症/RADWIMPS

120718
加筆修正 131021



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