※一秋、GL要素あり





「一之瀬」

「ああ、なまえ。来てくれたん……え?え、今、まだ大会中じゃ」

「どうせ円堂は勝つし、用事が終わったらまた戻る。お前なんぞに心配される筋合いは皆目無い」

「…そう、相変わらず手厳しいなぁ」


「誰に聞いたの、この場所。秋にも、土門にも教えてないのに」

「嘗めるな、お前んとこの監督脅してやったわ」

「…ああ、君ならやりかねないかな。まどろっこしいこと、嫌いだったよね」

「お前が私のことを理解しているというのは、なんだ、こう、気色悪いな」

「怪我人なんだしもっと優しい言葉掛けてよ」

「断る」



「それで、わざわざ国境越えてまで何しにきたの?お見舞いなわけないだろうしさ」

「ああ、お前を貶しにきた。一之瀬、お前、足壊す覚悟であの試合に臨んでたらしいな」

「…誰に聞いた?」

「色んな奴が教えてくれたよ。円堂も土門もお前んとこのチームメイトも監督もな。お前、馬鹿だな」

「そうだね、皆にも何度も言われたよ」

「そうか、もう一度言ってやろう。お前は馬鹿だ。お前は大馬鹿者だ」

「………」

「秋は泣いていた」



「私には嫌いなものがたくさんある。まず第一に秋を泣かせる奴、つまりお前。第二に秋が好きな奴、つまりお前と円堂。第三に秋を好きな奴、つまりお前。従って私はお前のことなんか大ッ嫌いだ」

「…知ってるよ。俺も君のことは、大嫌いだから」

「しかし秋の手前、仲が良い振りをする」

「ああそうだ。君は秋の大切な親友だから」

「しかしここまで来てしまえば、秋はいない。だから私はわざわざこんなクソ遠いとこまで来てやったんだ」

「で?秋との時間を惜しんでまでここに来た理由は?」

「お前が私の大嫌いな奴、つまり秋を泣かせて秋が好きで秋を好きな奴だからだ」



「お前が怪我するだけで秋は泣くんだ。お前の足が動かなくなったり、死んだりしたら、秋は干上がるぞ。現にお前が死んだ詐欺した時、秋は一日泣いて三日なにも食わなかった。このまま秋も死ぬのかと思って、私はとても怖かったよ」

「……その話は、うん、土門から聞いた」

「あの時ほどお前を殺してやろうと思ったことはないよ。しかしお前は既に死んでいたからな、その時はできなかったわけだが。何食わぬ顔して雷門中に来たとき、今こそ絞め殺すべきだと思った。挙句に秋に抱きつきやがって、隕石でも落ちれば良いと思ったよ。ただお前が生きてたことに喜ぶ秋の笑顔がそれを踏みとどまらせた。だから私は、お前がもう一度秋を泣かせたなら、その時にはこの手で葬り去ってやろうと考えたんだ」

「…なまえに殺されるなら、何も文句は言えないな」

「しかし私がお前を殺したとして、秋は泣くだろう。秋を泣かせた私を殺しても、秋は泣くだろう。そうすれば私はどうすれば良い。私はただ、秋を泣かせる奴が憎いだけなんだ」

「……」

「だから一之瀬、お前にチャンスをやる。まずその足さっさと治して、またサッカーやれ。そんで秋を泣かすな。一つでも破ったら、特に秋を泣かせたら、次こそお前には消えてもらう。分かったか」



「…君は、なまえは、昔っから、自分のことなんかどうでもよくて、秋の幸せしか考えてない子だったよね。変わってないなあ」

「私は変わらないよ。これからも絶対に変わらない。例え秋に嫌われたとしても、私は私のままだ。私は私のまま、私が終わる時も私のままだ」

「俺がどうして、足のこと、なまえに教えなかったか分かる?」

「………」

「きっと殴られて、そのまま病院に連れてかれるんだろうなって分かってたからだよ。秋のためにね。秋は俺も土門も西垣も、もちろんなまえも大事にしてるから、なまえも仕方なく俺を大事にしなくちゃいけないだろ?秋たちは俺が『やりたい』って言えばそれを無視することはできない。優しいから。でも君は俺がどれだけ自分の意志を貫こうとしようが、そんなのは認めない。秋に関わることなら殊更ね。優しいから。だから俺はなまえにだけは言うつもりなかった」

「一之瀬は本物の馬鹿だな。その頭もついでに治してもらえ。気持ち悪いことばかり言いやがって」





君限定アイ







二人きりにしては仲が良い。この二人の仲の良さは残念ながらこれがマックスです。間に秋ちゃんが入るとむしろ険悪に。
最後のはツンデレや照れ隠しではなくてただの純粋な悪口。

アイ…愛、哀、eye、I etc.
たくさんあるのでお好みでどうぞ

120707
加筆修正 131021



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