ザンザス様は私のおにいさまだけれど、愛された記憶なんて欠片もなかった。



 私のお母様はおとうさまの妹。お母様は生来お身体が悪く、私を産んだと同時に亡くなったと聞く。父親が分からなかったため伯父であるおとうさまに引き取られたのだけれど、実はお母様とおとうさまは血が繋がっていない。娘の欲しかったおじいさまとおばあさまが養子にとられたのだとか。だから私はおとうさまともおにいさまとも血が繋がっていない。

 それを知っているのは、私とおとうさまと、今は亡きお母様だけ。何もお知りにならないおにいさまは、私が八つの頃からお眠りになったままでまだ起きていらっしゃらない。あれからもう、八年も経ってしまったというのに。



「…分かりました。ですがキャバッローネとはもう同盟を組んでおります。牽制のためにも他の敵対マフィアとの方が宜しいのでは?」


 幸いにも私はブラッド・オブ・ボンゴレではございませんし、と漏らせば、おとうさまは隠そうとせず悲しい顔をした。祖父と孫程に年の離れた私のおとうさまは、マフィアのボスにしては優しすぎると思う。

 おとうさまの、マフィアのボスたる残酷で厳しい部分も知っているのだけど、それでも私の前では見せようとはしない。血の繋がりなんてなくてもおとうさまからは愛情を感じる。だから私もそれに、応えたいだけなのに。


「正統な血筋もなく、しかしボスの娘という利用価値のある私を、キャバッローネという内側で飼い殺すのはあまりよい選択であるとは思えません。フォルテシモなどはいかがですか、よい噂は聞きませんが名に恥じぬあの戦闘力は脅威です」


いざとなったら私など切り捨てればよいのです。

 期待などしていなかった平手打ちは、やはり飛んではこなかった。親不孝者と怒って打ってくれたのなら、安心の一つも出来たのに。本当の意味で家庭をもったことのないおとうさまには、酷な話なのかしら。なんて、本当の家族など知らない私が考えるのは滑稽な話だわ。

 おとうさまとおにいさまと私、血の繋がらないもの三人。集まったところで結局、ごっこ遊びにしかならないのね。答えなんて、当の昔に知っていたはずなのにね。





プラスチックを踏みつけて







ザンザスおにいさまなんてひとかけらも関係のない話。
ヴァリアー編はまだ始まってないけど、ザンザス様はもう起きてるんじゃないかな、と思ってます。流石のあの人でもさっきまで凍ってたのにすぐ動けるわけがない。

起きてからと凍る前の話も少し書いてみたい。言うだけならただ。

120707
加筆修正 131021



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