「奇跡ってー、どうしたら起こせるのかなー?」

「…どしたー?いきなり」

「奇跡さー、起こしたくって」


 珍しく練習がない休日は、大体ここぞとばかりに彼女とのデートにあてる。映画見たり釣りしたり遊園地行ったり釣りしたり色々するけど、今日は俺の部屋でお家デート。元々テストが近いから休みになったわけで、じゃあ形だけでもやっとく?ってな感じでこうなったわけだけど、折角二人でいるのにそんな勿体ない時間の使い方したくないっちゅーことで早々に勉強は中断した。大体集中できんし。

 そんで勉強サボってなにしてるかっちゅーと、まあ大して何もしとらん。ごろーんと寝っ転がって、あの先生がどうだこのアーティストがどうだあの映画は面白そうだとか、そーゆー気の抜けた話をゆーっくりしたりしなかったり。心地いい空間ってこういうことなんだろうな、なんて思ったり。

 そんな感じにぐでーっとしたデートらしからぬ会話をしとったら、そのままのノリでいきなり彼女がそう言い出した。奇跡の起こし方?


「奇跡起こしてなにすんの?」

「えー、分かんないよ。何にもないとこに奇跡起きないし……あ、全然勉強してないけど良い点とりたいなー」


 俺の彼女はちょーっと変で、だいぶお馬鹿さん。そんなとこも可愛いんだけど、あんまりにも変なこと言ったりするからたまに困っちゃうんだよねー。そんなとこも超可愛いんだけど。そんな彼女、なまえちゃんにどうしようかと思ってたら、ぴこーんといい方法が閃いた。わ、俺天才かもしれん。

 寝転んだままごろんごろんと転がってなまえちゃんの傍に行く。足が机に当たってちょっと痛かったんは内緒にしとこう。近くまで来たら腕を伸ばしてぎゅっと抱き締めて、もっと距離を縮める。やーらかい。あといい匂い。シャンプーの匂いとは違うし、何の匂いなんかな?ぎゅっとしたまますんすんと匂ぐと、くすぐったかったのか笑って身を捻った。

 しばらくそうやって戯れてると不意に目が合って、そのまま俺はなまえちゃんにちゅーした。俺たちのキスは触れ合うだけの子供みたいなもんだけど、まあまだ子供だしいいんじゃね?ちゅーのその先を知らないわけじゃないけど、まだ早いっていうか…正直ちゅーで精一杯だし。目を開けると顔を真っ赤にしたなまえちゃんと目が合った。なまえちゃん、かーわいー。


「いきなりなにするの、浜野くん」

「んー?奇跡起こしてみた」


 少し拗ねたように言うなまえちゃんに、あはっと笑ってそう言う。するとなまえちゃんは不思議そうに首を傾げた。頭の上にハテナマークが浮かんだのが見えた、気がする。状況が理解できてない彼女をまたぎゅっと抱き締めて、優しく説明してあげることにした。


「えーっと、今地球上には69億の人がいてさ、日本にも1億3千万くらい人がいるっていわれてるじゃん?そんな中で出会えて、こーやってお互いを好きでさ、今抱き締めれてちゅーできるのって、ちょー奇跡だと思わん?」


 他にも、同じ時に同じところに生まれて同じ学校に通って、同い年の奴らが世界にどんだけいるのかは分からんけど、多いと感じてる同級生も全校生徒も先生も、みんな奇跡の塊。だって69億だよ?出会ったり話したりすれ違ったり、それだけでもう奇跡なのに、そんな中で愛し合えるなんてこれ以上ない奇跡っちゅーか、だって極端なこといえば35億人バーサス俺ってことじゃん、なまえちゃんの愛を受けれるのはさ。そんでなまえちゃんの好きな人が俺っちゅーことは俺は35億人に勝ったってわけで、これを奇跡といわずしてなんというよ。

 俺の奇跡自論を聞いたなまえちゃんは、なるほどと納得して俺に抱きついてきた。役得役得、やーらかくって俺クラクラしてきた。


「じゃーこれも奇跡、だね!」


 その笑顔を見れるのも俺の特権、奇跡だよ。奇跡が生んだこの星で起こることなんだから、すべて奇跡以外ありえないだろ?





イッツオールミラクル!







ちゅーか可愛いよちゅーか

ふたりごと/RADWIMPS

110815



↓叱咤お願いします