目が虚ろだった。疲れ果てているようで、心なしかやつれているように見えた。
 それでも彼女は美しかった。

「東堂くんを私だけのものにしたい。そう思うのはいけないことかな」

 ぽつり、と呟いて、小さな手で小さな顔を覆った。大きな瞳からは大粒の涙が零れているのだろうか。

「嫌われたくない。だから何も言えない。今この瞬間にも他の女の子に笑顔を見せているのかと思うと、嫉妬で気がおかしくなりそう」

 肩も声も震えていて、オレは思わず抱きしめそうになった。彼女を慰めることは、オレの役目だろうか。少しの逡巡の後、背中をゆっくりとさすった。しゃくりあげるのが聞こえて、胸が痛む。

「知っているのに。東堂くんがああして振る舞うことで、私への嫌がらせが減ることも。東堂くんが私のことを考えてくれていることも。知っているのに、それでも嫌だと思ってしまう、自分が情けなくて不甲斐なくて、一瞬でも東堂くんを疑ってしまったことが、悔しくて恥ずかしくて、どうしようもない」

 美しい人は美しい心を持っているのだ。美術品を愛でるように、オレは、美しい友人たちの恋を愛でていた。