日々人が、生きていた。生きていてくれた。生を諦めないでくれた。月が、宇宙が大好きな彼のことだから、もしかしたらその中で死んでしまうんじゃないかと思ったこともあったけれど、それでも生きていてくれた。大丈夫、君のパパは約束を破る人じゃない。


 彼女は今病院にいる、と告げられた時の日々人の顔は、まさに顔面蒼白だった。この世の終わりを告げられたような顔で、なんで、と聞く。数時間前に見た彼女の顔と、同じ顔をしていた。


「ごめんなさい、心配かけて」
『…俺の方こそ、ごめん』
「…あのね、帰ってくるまで内緒にしようと思ってたんだけど」
『うん』
「日々人、あなた実は5ヶ月前からパパになったのよ』
『………え?』
「だから、ちゃんと帰ってきてくれないと困るわ」
『え、ちょっと、待って、…お腹に?』
「そうよ。もう少しすれば、目立ち始めるんじゃないかしら。最近は時々動くようになってきたの」
『…本当に、ごめん、俺の方が…心配かけた』
「気にしないで、なんて言わないわよ。悪いと思うなら、ちゃんと元気で帰ってきて。私もこの子もね、あなたがいれば、それでいいんだから」