「堀ちゃん先輩、もう舞台に立たないんスか?」
「なんだ、急に」
「急じゃないっスよ。ずっと気になってたっス」
「あー……まあ、鹿島がいるからな」
「……じゃあ、せめて影ナレとかやってくださいよ」
「お前の仕事なくなんじゃねーか」
「堀ちゃん先輩が卒業したらまたあたしに回ってくるからいいんスよ」
「よかねーよ。お前をスカウトしたのは俺なんだから」
「…あたし、堀ちゃん先輩を追って来たんスよ?中学ん時も、ちょーかっこよかったから、憧れてたし。そのあたしの気持ちはどうしてくれんスかー?」
「あー…」
「遊くんの演技は好きっスよ。キラキラしててちょーかっこいいっス。でもあたしは、堀ちゃん先輩の演技だって、華があってちょーかっこいいって思ってたんスけど?」
「………」
「堀ちゃんせんぱーい?」
「…あのな。とりあえず、褒めてくれてありがとな」
「どういたしましてっス」
「それで、俺は今のところ役者をやるつもりはない。鹿島のこともあるし、他の事情もある。裏方も楽しいしな」
「…っス」
「でも、ずっとやらないわけじゃねえから。今は、ってだけだ。だから少し待っててくれ。それか、また追いかけて来い」
「っス!」


「遊くーん、部活行くっスよー」
「おっと、お迎えが来ちゃった。じゃあまた明日ね、千代ちゃん」
「え?あ、うん!」

「今日は読み合せっスよ〜」
「…なんかいつもより機嫌いいね?」
「へへ、分かるっスか?今日中田くんお休みなんスよ、お家の都合で」
「へえ」
「だから中田くんのとこ、代わりに堀ちゃん先輩がやるんス!それが楽しみなんスよ〜」
「あー、そういうこと。本当に好きだね」
「っス!あたし、堀ちゃん先輩の演技に憧れて追っかけて来てんスから、筋金入りっスよ!」
「(演技に、ってところがなんとも…前途多難だなあ…)」