「熱愛報道なんて、最悪、こんなんすっぱ抜かれて、今日が何の日だと思ってんの、馬鹿みたい」

 馬鹿みたいなのは、御幸もだし、私もだ。最悪なのだって御幸だけじゃない。

「確かに最近お互い忙しくて会えてなかったけど、それでも連絡は毎日してたじゃん。不満があったなら一言言ってくれればよかったのに」

 私が今日という日をどれだけ楽しみにしてたと思ってるの。なんて、言ってやらない。予約してただろうレストランだって行く気になれないし、花束はトランクの中で萎れる運命だろうし、指輪は売っちゃえば?それか熱愛中のカノジョにあげればいい。そう、そうだわ、綺麗な夜景の見えるレストランも、5キロのバラも、流行りの0.3カラットのダイヤも、スイートルームも、全部全部熱愛中のカノジョと楽しめばいい。

「御幸が黙ってる時って、自分に非があるって認めてる時だよね。…酷い人」

 私、泣いてないだろうか。声は震えてないけど涙は自信ない。でもいいか、だって御幸、私の方見ないもの。黙って俯いて私の話を全部聞いて、そんで謝るのが御幸の常套手段だから。口挟まずに聞いてくれるのはいいけどさ、弁解の一つでもしたらどうなの?言い訳でもいいから言ってよ、遊びだとか誤解だとか、じゃないとただの浮気じゃん。じゃないと私、付き合って10年目なのに浮気された、ただの間抜けな女になっちゃうじゃん。



「大体さ、浮気のくせに堂々と街中でキスなんかかましてんじゃないよ。しかも何これ、顎持ち上げてさ、あんたからしてんじゃん。そりゃ申し開きも何もできませんよねって話。それにしてもパパラッチすごいね、夜なのにはっきり写ってる。これ完全に御幸だわ。この服知ってる、私がプレゼントしたやつ。彼女にもらった服で火遊びなんていいご身分だこと」