今頃はどの辺りにいるのだろう。地球に近いのか、それとももう月の近くまでいるのか。彼のお兄さんや関係者に聞けば、詳しく教えてくれるだろう。けれどもそうしようとは思わなかった。私は青い星にいて、彼は暗くて壮大な宇宙にいる。夢に向かっている。それが分かれば十分だった。
 無事に帰ってこられたら、籍を入れようと言われた。私はそれに頷いて、死亡フラグにはしないでねと笑った。彼も笑った。彼が無事に帰ってくる、6月。私は幸せな花嫁になれるだろう。愛する人と結ばれる上に、私にはもう宝物がいた。

「君のパパが帰ってきたら、きっと驚くね。…知らない間に君がいて、知らない間に大きくなってるんだから」

 お腹の膨らんだ花嫁を、周りはきっと祝福してくれるだろう。きっと誰もが喜んでくれる。

「さてと、君のおじいちゃんとおばあちゃんに会いに行こうね」

 まだ重くもなく、実感もないお腹を撫でる。君が育っていく毎に、パパに会える日が近づくと思うと、ママはとても幸せだよ。
 会える、その日までは、彼の満面の笑みを想像していよう。あなたを置いてママになっちゃった、と言ったらどんな顔をするだろう。びっくりする?戸惑う?色々考えてみるけど、やっぱり笑顔しか浮かばない。
 宇宙にいる私の恋人は、今もきっとキラキラした笑顔で夢と憧れを見つめているのだろう。



宇宙の恋人