それは夢が始まる瞬間だった。
 あの時も私はそう思ったはずだ。みんなと過ごした日々を思い出して、これは終わりなんかじゃないって。そう、思いたかったから。あんなに毎日一緒にいたのに、離れ離れになってしまうなんて、認めたくなかったから。私は子供でなんの力もなかったから。
 だからこれは始まりなんだって。始まりのための終わりだから、悲しいことなんかじゃないって、言い聞かせてた。私はあの頃より大人になれたのだろうか。

 これからどうなるんだろう。永遠を生きる選択は、そう難しいことじゃない。難しいのは生き続けること。夢もキラキラも、絶えてしまうから。
 永遠になる。それがみんなの、お父さんの夢だった。夢は叶うもの。みんなにそう教えてもらった。
 けれど永遠は、終わって始まるものだ。これが始まる終わりだといい。私はそうはっきりと祈って、興奮冷めやらぬ客席を後にした。