昼休み、滅多に使用しない空き教室を指定して呼び出される。もう何度目だろう。憂鬱な思いで胸がいっぱいになる。私は真剣にマネージャーをしてるのに。
 無視すれば面倒なことになるのを、とっくの昔に学んだ私は、素直に指定された場所に向かう。特別教室棟の視聴覚準備室。防音バッチリ。嫌な感じ。
 無言でスライドの扉を開ける。思ったよりも乱暴だったみたいで、結構大きな音が鳴った。すでに教室にいた小さな背中が、びくりと震える。…一人。

「あ、も、桃井さん。来てくれてありがとうっ!」
「…へ?」

 振り向いた小さな背中の持ち主は、確か大ちゃんと同じクラスの子。ぱっと花が咲いたような笑顔を向けられて、別の意味で身構える。
 入って入って、と促されて、今度は静かに扉を閉めて教室の中に入る。途端に、ロッカーや物陰からたくさんの女子が出てきて…とかは、ないみたい。

「あのね桃井さん。突然だけど私、青峰くんが好きなんです!」

 キラキラした目でいきなりそう言った彼女は、眩しくて、なんとなくすれてた心が晴れたような、そんな気がした。