はるちゃん、私に溺れて。

 泣きそうな目をしてぽとりと落とされたその言葉が、嫌に心の深いところに居座った。大切にしている。愛している。…何が足りないというのか。

「ごめんなさい、はるちゃん。忘れてください。ただのわがままだから…」
「…俺に足りないところがあるなら、言ってほしい」
「違うの。はるちゃんはとても私を大切にしてくれています。私が、それだけじゃ足りなくなっちゃっただけなんです」

 はるちゃんに、私だけを見てほしい。まこちゃんもりんちゃんも、はるちゃんが好きなもの全部捨てて、私だけを必要としてほしい。ごめんなさい。ごめんなさい、嫌いにならないで。

 はるちゃん、ごめんなさい、と繰り返し呟く小さな唇にかじりつく。甘いリップの味も、お前の発する言葉も、零す息も、掴んだ細い手首も、抱いた腰も、頬を滑る涙も、その赤い頬も、お前のすべてが俺のものになればいい。お前が好きなものをすべて捨てて、俺だけを必要としてくれたら。ああでも、無理だって、分かってるんだ。分かってるんだろう。