ゆらりと揺れる炎の幻を見た | ナノ


▼ 消火

(R:B若干ネタバレ)






(いっそ、全て焼き尽くしてしまえば)
能力の暴走、己が己でなくなる恐怖。力に飲み込まれそうになる不安。
「…熱い…」
つい口から出た言葉。
尊は上裸でベッドに腰掛けながら両手をグッと握りしめた。
暑さによる汗なのか、または熱さによる汗なのか。顎に伝った汗がポタリと床に落ちた。
「尊。シャワー空いたよ」
尊のスウェットを着た倭は、バスタオルで頭を拭きながら、尊に近づいた。
尊との情事後の倭の首元には尊が付けた噛み跡がクッキリと残っていた。
「…尊?」
「悪ィ…」
「それは首の噛み跡のこと?……それとも別の事?」
倭はスッと目を細めた。
尊の力がジリジリと溢れているのを見たからだ。
「大丈夫、大丈夫。尊はここにいるよ」
フワリと倭は尊を抱きしめた。
「尊は力に負けない。私は知ってる」
「…離せ。お前まで焼く」
「離さない。この炎は、この温かさは、人を焼かない事くらい知ってるよ」
倭は抱きしめる力を強めた。
「尊は、こんなことじゃ負けないよ。尊は迦具都玄示にはならない」
「保証は無ェだろ」
「ならない。私や出雲、強力ストッパーな多々良だっている。私たちを甘く見ないでよ」
「…」
「ね、大丈夫。尊を力の沼に溺れさせない。溺れても私が力尽くで助けるよ」
「…」
「張り手でも、蹴りでも。それで尊を救えるなら、どんな手だって使う。尊のためだもの」
「…張り手も蹴りもするのか」
尊は眉間のシワをそのままに、少し渋い顔をした。それを汲み取ったのか、倭はクスリと笑った。
「…例え話だから。迦具都玄示と違うのは、“尊には、そうしてでも止めようとする仲間がいる”って事。忘れないで」
「…ああ。」
いつのまにか、尊を渦巻いていた炎は消えていた。
倭は腕の力を緩め、肩に手を置いて腕を伸ばし、尊を正面から見つめた。
ベッドヘッドに置かれた倭の端末の時刻が0時になり、ピピピと存在を主張するように、しかし控えめにアラームが鳴った。
「尊。誕生日、おめでとう。来年もその次の年も、その次も、ずっと私に祝わせて。“おめでとう”って言わせて。お願い」
「…わかった」
「ありがとう」
ふふ、と倭は微笑んで尊の隣に座った。
「…力、収まったね」
「どっかの誰かが必死に止めるもんでな」
「どっかの誰かが熱い熱い言うもんだから」
そう言って互いを見つめた。
「そりゃどーも」
「いーえ」


…………………………
映画ネタバレですが!
映画の尊さんカッコよすぎました。好きです。
お誕生日おめでとうございます。
フライングお祝い。


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