ゆらりと揺れる炎の幻を見た | ナノ


▼ 勲章・絆創膏

地面をひと蹴りし、たん、と敵の前に立つと炎を纏った特殊警棒を振るう。相手の持っていた銃を叩き落とし、顎に的確な打撃を送る。
こんなにも力が湧いてくる。ひどく調子がいい。
にやりと笑う自分に気がついた。
相手の子飼いのストレインなのか、先程から1人の男が派手に攻撃してくる。
手からビームが出るストレインのようで、バカスカと打ってくるのがひどく邪魔に感じた。
ビームを出そうとした左手を掴み上げ、炎を纏った足で回し蹴りをする。相手はたくさんの粉袋の入った段ボールの山に沈んだ。もくもくと埃と粉が舞う。
視界が悪くなる中、ボッとタックルを仕掛けて来たストレインを特殊警棒で殴りつけ、蹴り上げれば、相手は簡単に床に伏せることになった。
「……こんなもんですか?」
そう問うと、まだ戦おうと拳銃や棒を構えていた男たちが後ずさる。

「お、おまえの目当ては、こ、この薬だろ!全部持ってけ!や、やるから!もう勘弁してくれ……!」
「勘違いしないでください。私達には薬はただの粉。小麦粉以下です。そんなの要らないんですよ。売っていた貴方達を痛め付けるのが私の仕事です。ココで、鎮目町で薬をばら撒いていた貴方達をね。」

そう言うと倭は息を吸い、思いきり炎を吹き出した。
周囲が一面炎の海になる。もちろん、段ボールの中の粉が炎のなかでゴウゴウと音を立てて燃え上がる。
よろりと立ち上がったストレインはペッと血を吐き出すと、こちらに向かって走ってきた。倭はそれを半歩引いて避けると炎を纏った特殊警棒で一打を加え、昏倒させる。
暫く起き上がることはないだろう。
それを見た男達はさらに縮み上がる。

「では、貴方達の番ですね?」

その言葉を皮切りに、倭は地を蹴り出し、特殊警棒で叩きつけてやる。次に棒を振るってきた男には回し蹴りを見舞いして、その勢いでもう1人、また1人と蹴りつけていく。
ヤケクソに園芸用の鎌を振るって来た男を特殊警棒で受け止めると、男の顔に向かって炎を吐き出す。それに怯んだうちに鳩尾にひと蹴りする。男は面白いように飛び、仲間を薙ぎ倒していった。
倭は誰も動かないのを見て、ふぅ、と溜息をついた。
そこを、昏倒させたはずのストレインがよろりと立ち上がってビームを打ち出しながらこちらに走ってきた。
ち、と舌打ちして上段蹴りをし、さらに回し蹴りをお見舞いする。ビームを出そうと手のひらをこちらに向けた相手の手を踏みつけ、ビームのかすった頬の血を拭った。
特殊警棒を振り上げると、誰かに後ろから腕を掴まれて、そちらに視線を向ける。

「…力に溺れんじゃねえよ」
「……尊?」

力が抜けて体から漲る炎を収める。
尊はストレインにひと蹴り入れると、ストレインは壊れたおもちゃのようにその場に臥せる事になった。

「ここの奴ら、全部倭さんがやったんすか!」

八田の一言に「まあね」と頷くと、草薙から軽いゲンコツが降ってきた。

「痛い!出雲、暴力反対!」

ゲンコツされた所をさする倭。

「増援待てって言うたやろ!」
「だって予想より少なくてやれると思ったから……」
「相手にはストレインも居ったんやぞ!」
「あ、うん。ノーコンのストレインが」
「ホンマ、ノーコンで良かったわ……」

草薙は、ハァ、と溜息をつくと、部屋の中をグルリと見渡した。
倭に伸された男たちが転がっている。全員戦闘不能になっており、うめき声がそこかしこから上がる。

「また、見事に暴れたもんやな……」

その惨状に、また溜息をつく。
尊は煙草を燻らせながらビルの一部屋を見回す。窓ガラスほぼほぼ割れ、一室の隅に積まれていただろう段ボールは潰れて崩れて、大部分は焼けている。焼け残った袋から白い粉が覗く。
応接用のテーブルには血を流した男が倒れており、応接用のソファーは燃えてバネが見えている。
尊は溜息をついて倭の腕を離すと、後は頼んだと言わんばかりにクルリと踵を返した。


後片付けを草薙に任せ、倭は坂東の運転するバンの後部座席に乗ると、先にビルから出たはずの尊が隣に乗ってきた。

「…珍しい…」

ポツリと倭は言うと、尊は「あ?」とタバコから口を離した。フーッと煙を窓の外に吐き出して倭の方を向いた。

「いつも助手席なのに。」
「…気分だ」
「とか言って、心配してくれたんでしょ?」
「まあな」
「尊も心配するんだねぇ………え?心配したの?」
「…悪りぃか」
「いや、悪かないけど……えっと、その…ありがと」
「あぁ。」

暫くの沈黙が2人を包む。坂東は「頼む、何か話してくれ、この空気感耐えられない!」と心の中で思いながら、ぎゅっと両手でハンドルを握って、できるだけ後ろに気がいかないように安全運転に努めた。

「…こっち向け」

口を開いたのは尊だった。

「え?」

倭は不思議そうに尊に向くと、尊はゴソゴソと何かをポケットから出し、その箱の中身を開けた。何枚も繋がったうちの1つをバリッと剥がすと、

ぺたり。

倭の頬に貼られたのは絆創膏だった。

「…もう傷作るんじゃねえぞ」
「え?……あ、…はい」

倭は頬の絆創膏を手で触りながら返事を返した。

「あれだけの人数がいたら必ず俺を呼べ。いいな」
「でも尊が出るまでもないよ、あんなの…」
「次お前が傷作ってみろ、俺がそいつらを殺す」
「…はい……」



…………………………
終わっとけ!(←)

格闘シーンが書きたかっただけです。特撮が好きなので、格闘シーンは特撮を見ながら打ってました。シンケンジャーとゴーカイジャーが好きでした。
坂東の気持ち、書いてて楽しかったです(笑)
そして尊がニセモノー…。分かってる…分かってる…尊さんが絆創膏なんて持ってないって…でもやっぱりやりたかったネタなんだよね…。
すみません!尊さんは普段からそんなに喋るキャラじゃ無いので書きにくい!だからニセモノになってしまう…うおおお、精進…。


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