ゆらりと揺れる炎の幻を見た | ナノ


▼ コーヒーでも飲みながら

バーカウンターの一番端。
いつもの伏見の居場所。

「伏見くん、コーヒー飲む?」

八田と鎌本らがやんやと尊の周りで騒いでいるのをボケっと見ていると、バーカウンターの内側から倭が声をかけてきた。
コトリとカウンターの上に置かれたコーヒーはマグカップの中で湯気を立てている。

「はい。熱いから、気をつけて」

別にコーヒーを頼んだわけでもないのに、と思って彼を見上げると、倭はニコリと笑い掛けて、自分のコーヒーに口を付けた。

「あっつ……よく冷まして飲んで。コレ、火傷するかも」

そう言ってマグカップに息を吹きかける。湯気がふわりとマグカップから出て行った。
女のようにサラリとした髪が倭の横顔を隠す。

「……なんでアンタも十束さんも、そんなに俺のこと構うんすか。ほっとけばいいでしょ」
「なんでって…伏見くんと話したいと思ったから?深い意味はないよ」

すだれのようになった髪を耳にかけ、此方に顔を向けた。

「伏見くん、いつもつまらなそうだったから。八田ちゃんとはよく話してるのに、他のメンバーと話してるの、あまり見ないなあ…って思って。」
「アンタもそんなもんじゃないすか。尊さんと草薙さんと十束さん以外で喋ってるの、見たこと無いですよ」
「そんなことないと思うんだけどなぁ。そう見える?」
「バカ以外は気が付いてると思いますよ」
「……ぐうの音も出ないね…。そんなつもりはないんだけど、うーん…確かにあまり話してないかも…。多々良みたいに場を和ます力も無ければ、話し上手でも無いからね。……あまり人付き合いって上手じゃなくて」

そう言ってコーヒーで喉を潤す。伏見もカウンターに置かれたコーヒーに手を伸ばした。

「あの人は特殊でしょ。」

伏見はまだ湯気の立つコーヒーに口を付けた。
それを聞いた倭はフフと笑って「かもね」と同意した。

…………………………
リハビリです。
たまにはこんな過去編もありかな。


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