ゆらりと揺れる炎の幻を見た | ナノ


▼ 無事ならそれで

油断したと思った。
八田と伏見じゃないが、勝手に単独行動するものじゃない。そう思ったのは後の祭りで、ヤクザの組を襲撃した際に頭を鈍器で殴られて気を失った。
気がついた時には膝立ちで両手を頭上で一括りにされた状態で口にはボールギャグを噛まされていた。倭が火を吹かないようにだろう。
「……お、気がついたかよ」
組の構成員だろうか、柄のシャツを中に着たスーツの男が声をかけてきた。その言葉を聞いた仲間たちが倭の方を向く。
「こんな危ないもの、振り回すもんじゃねぇぜ、お兄さん」
そう言った男の手には倭の愛用していた特殊警棒とブーツがあった。ブーツの中に鉄を仕込んであったことがバレたのか。気を失ってる間に随分念入りに持ち物検査をされたようだ。
「殺さずにヤっちまおうって話ししてたんだけど、あんた男だったんだな。なら、殺すしかねえなぁ……?あんたみたいな顔のキレイなヤツ、女だったら生かしてやったんだけど。俺たち、そっちの趣味はねえから」
そう言うと、持っていた倭の特殊警棒で側頭部を殴りつけられた。
「…ぅっ」
ジンジンした感覚がズキズキとしたものに変わる。
「まあ、男だったことを恨むんだなー」
もう一発殴られ、ズキズキとした感覚がガンガンと脈を激しく打つ感覚に変わる。
別の男が角材の角で脇腹を殴りつけ、鎌本並みに体格のいい男があばらのあたりに蹴りを入れる。それを皮切りに男たちが武器や蹴りや拳で倭を殴って行く。
頭、頬、腕、胸、腹、鳩尾、太もも、殴っていない所は無いのではないかと言うほど攻撃をくらい、ミミズ腫れや出血、ところどころ骨が折れているであろうと思われた。
「うぅう……っう」
倭はボールギャグ越しに呻く。
「痛えか?痛えよな?もっと苦しめよ」
鉄パイプが倭の肩に当たって骨が軋む音がした。
「うっ!」
思わず目を瞑り、痛みに耐える。
「…っ……ぅううう!!」
倭は力むように呻くと、手を拘束していた手錠を焼き切り、勢いでその場に倒れた。
「なんだこいつ!まだ抵抗する気か!」
手錠が外れたことに男たちの手が止まったのを見た倭は、痛む身体に鞭打ってヨロリと起き上がり、一番近くにいた男に飛びかかった。
取れた手錠の輪をナックルのように構えて、顔面を殴りつけ、鼻の骨を砕く。
「うがぁああ!鼻!鼻が!」
相手が顔面を押さえて倒れ込んだ。
ボールギャグをむしり取る様に剥がすと、血をぺっと吐き出してギラリと男たちをにらんだ。
「…まだ、やる?」
そう言って倭は鉄パイプを拾い上げた。
「や、やっちまえ!!」
男の号令で男たちが倭に向かって走り出す。
すると、男たちの背後でバンッと扉が弾け飛ぶ音がして、男たちの動きが止まった。
「な、なんだ?!うわっ!」
伏見の放ったナイフが男の体に刺さり、倒れ込んだ。
「あああ!いでぇ!!」
悶絶する男に、伏見の次に入って来た八田はナイフを深く刺す様に踏み、男たちを見回した。
「吠舞羅のNo.4を袋叩きたぁ、やってくれんじゃねえの!」
八田が吠え、男に向かって走り出すと金属バットを振るった。
「伏見くん、八田ちゃん、みんな」
伏見は八田や鎌本らに乱闘を任せると、倭の方へ駆け寄った。
「俺らには無茶するなって言う癖に、自分はどうなんですか」
伏見に呆れる様に言われ、倭は「ゴメン」と言って崩れ落ちる。伏見は倭の腕を掴み、倒れこむ倭を支えた。
「八田ちゃん、手加減せんでええで。徹底的にボコボコにしたり」
草薙は入ってくるなりそう言って、倭の元へ近づいた。
「……こんの、どアホ!何しとんねん!」
「…すいません……」
倭は小さくなって謝る。
「伏見、支えてくれるか。バンに乗せたら手当するで」
鼻を押さえて悶絶していた男の腹に蹴りを入れ、草薙が先導して道を開ける。
倭をバンの中に押し込むと、草薙は倭の怪我の状態を見て長く溜息を吐いた。
倭は頭から血を流し、口の端を切っており、右頬は青く変色して腫れていて、シャツの下は擦り傷、切り傷、打ち身、骨折もしてるであろう。見事な怪我のデパート状態だった。
「…まず頭の血ィ止めよか。伏見、髪持ち上げてくれるか」
伏見は返事をしないで倭の前髪を掴むと優しく持ち上げた。
「痛っ」
パックリと開いた傷を見て草薙はまた溜息を吐いた。
「…ま、思ったよりは軽傷か……。頭は縫わんでも良さそうやな。……ちょい染みるで」
そう言って脱脂綿に消毒液を湿らせたものを倭の額に滑らせた。
「うっ……つー…」
倭が手のひらをぎゅっと握りしめ、目を瞑って悶絶する。草薙はテキパキと傷のサイズに合わせて切られたガーゼをそこに当てて、包帯をグルリと頭に巻きつける。
「我慢しい。パックリいっとるんやから。…ほれ、次は口の端。口開けてるとマキロンが入るで」
「ん……。」
倭は口を一文字に結んだ。
「…つか、なんで一人で行ったんすか」
草薙が倭の口の端に絆創膏を貼るのを待って、伏見は疑問を口にした。
「……バカにされたから」
「は?」
「吠舞羅をバカにされたから。一回痛い目にあってるくせに、もう一回痛い目見ないとわからないんだなって思ったら、体が動いてた」
「んなもん、いちいち気ィしてたらキリないやろ。シカトやシカト。言いたい奴に言わせとけばええねん。……自分、実はアホやろ」
「……はい」
怒られた子犬の様にシュンと落ち込む倭に草薙は何度目かの溜息を吐いた。
「尊止めるの大変やったんやで。自分が先頭きって行こうとしてたんやけど、まあ、十束が気ィつこてアイツ止めてくれてな」
「面目無いです…」
「あとで2人に『ごめんなさい』するんやで」
「はい…」
そうして倭が反省の色を見せていると、八田や鎌本らがドヤドヤと建物から出てきて、草薙に声をかけた。
「草薙さん、殲滅終わったっす!倭さん大丈夫っすか?」
「ああ、割と頭は軽傷や。体の方は骨折とかあるやろけど。ほな、終わったなら帰ろか」
バイク組はバイクにまたがり、それ以外の人間はバンに乗り込み、ゆるりと発進した。
「……気が重い…」
「自業自得じゃないですか」
ものの数分でBAR HOMRAに着き、伏見の支えでバンから降りて、BARのドアノブに手をかける。
「…あの、このまま家帰っちゃダメかな…」
開ける前に倭はボソリという。
「“ごめんなさい”が先や」
「…はい」
草薙にバッサリ切られ、倭はいつもより重たい扉を開けた。
が、そこにいたのは十束のみだった。
「おかえりーってうわ、倭さん大丈夫?やばいね?」
「ただいま、多々良…その、あの、ごめんなさい。心配かけました」
「あー、うん、まあ、無事でよかったよ。キングは二階に…あ、降りて来た」
ゴッゴッとブーツを鳴らしながら降りて来た赤の王を見た倭は不安そうにした。
「あの、尊…その…」
「来い」
「あ、はい…」
そういって言われるがままに二階への階段へ足を掛け、一度BARにいるチームメイトを見た。
草薙に「いって来い」と顎で尺られて、倭は階段を上って尊について行った。
尊がいつも使っている部屋に通されると、尊は1人掛けのソファーに座ったので、倭はベッドへ腰掛けた。
「…何された」
「…や、ちょっと袋叩きに…」
「なんで行った」
「吠舞羅と尊、バカにされたから」
そこまで言うと、尊は長いため息をつく代わりに、タバコの煙を長く吐き出した。
そして、近くにあった灰皿にタバコを押し付けると、倭右腕を引っ張り、手首の手錠痕を露出させた。
「こりゃなんだ」
「袋叩きにあった時に…拘束された…」
「他は」
「えっと多分…肋骨と左肩、折れてるかも…」
そう言われた尊は、溜息を吐き、一言「脱げ」と言った。
「ぬ、脱ぐの?」
「…今更恥ずかしいこたねぇだろ」
「いや、そうじゃなくて」
倭がモゴモゴと言い淀んでいると、尊は倭の服に手を掛けた。
「…脱ぎます、自分で、脱ぐから…」
そう言って倭は自分の服に手を掛けた。
プツプツとボタンを外していく。そこから見えたのは、内出血とミミズ腫れのオンパレード。不自然に盛り上がっているところは骨折であろう、痛々しく腫れている。
シャツのボタンを全て外したところで手を止めると、尊はまた溜息を吐いた。
「…心配、かけやがって」
「ごめんなさい。尊が出るまでもないと思ったから」
「…十束に言われた」
「そっか…」
尊は倭の傷に優しく触れると、倭はピクリと動いた。
それでも気にせず傷に手を這わす。
「みこと、痛い…」
「我慢しろ」
「…ごめんね」
「無事なら、それでいい」
「うん」


…………………………
尊さん嘘くせえwwwww
この後2人でイチャイチャします。きっと。


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