お茶




「〜♪〜♪」



オフの日に鼻唄を歌いながらカシャカシャと卵白を泡立てふんわりとキメの細かいメレンゲを作り上げていく。
ツノが立ちすぎない程度に垂れるくらいの柔らかさで完成すると、卵黄を砂糖と擦り合わせるように白っぽくなるまで泡立てたものとさっくり混ぜ合わせ粉ものと合わせていく。
今日の気分で抹茶の粉末を足し、型に流し込んでオーブンに入れて焼く。

一通りの作業を終え、使った器具を洗う。


「…有何作ってんだ?」
「…うぇっ!?」


いきなり声をかけられ驚き、肩を跳ね上がらせて目を見開いて振り替える。


「さっちゃん!!どっからどーやって入ったの!?何時来たの!?」
「どっからって、玄関から鍵使ってお前がノリノリで恥ずかしげもなく鼻唄歌ってる時に。」
「インターホン鳴らそうよ!」
「鍵持ってんのに鳴らすバカいないだろ。」


それもそうかと有は納得して器具を片付け始めるが、ん?と首を傾げて疑問を伏見に聞く。


「…さっちゃん…なんで私の寮の部屋の鍵持ってるの……?」
「……室長が…」
「あっ、なんか話し読めたからいいや」


聞きたくないいやいやと水で濡れた手で耳を塞ぐ。
これ以上職場の上司に対して失望というかドン引きというかそんなことはしたくない。


「で、何作ってんだよ」
「んーシフォンケーキの抹茶〜。明日休憩の時に副長から餡子貰って食べようかなって」
「……有お前…あの惨劇を繰り広げる気か…?」


伏見の脳裏に室長室で起きた餡子の山の惨劇が甦る。


「いやいや、流石にそれは阻止したい」
「あっそ。(阻止するとは言わねーのか…)」
「別の器に餡子出して貰えたら阻止出来ないかな〜って…」


まぁ、無駄な抵抗かもねと話しながら片付け終えてお茶を出すために茶葉を出す。


「抹茶のシフォンケーキ作っておいて出す茶が緑茶かよ」
「…嫌なら自分でどーぞ。」


ムッとしながらも手は止めない。
どうせ飲むことを知っているからだ。


「チッ…別に不満な訳じゃねーよ」


それからのんびりと会話をぽつりぽつりと交わしながらお茶を啜る。

















「やはり彼等は仲が宜しいようで。」


眼鏡をずれてもいないのに直し、モニター画面の向こうを見つめ微笑み呟いた。


(室長、失礼致します。)
(あぁ、淡島君ですか。どうぞ。)
(…何かあったのですか?)
(いえ、仲良きことは美しきかな…と思いましてね。)
(…はぁ、そうですか…?)










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