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──瞬きをすると、先程まで一期や宗三と話していた筈なのに気がつけば辺りは夜になっていた。
見回すと月明かりがそっと差し込む薄暗い部屋の中で2人の男がいた。
1人は赤い髪をたてており、煙草のケムリをくゆらせながらベッドに腰掛けて何かぼそぼそと大きな音をたてないようにもう1人の男へ何か言っていた。
もう1人の男は眉間にシワを寄せながらその言葉に耳を傾けているようだった。手は堅く握り締めている。
見たことのある風景だった。嗅いだことのある匂いだった。
まるで其処に立っていたことがあるような、デジャヴのような何か。
(デジャヴも何もあれはオレと敬愛すべき、守るべき王だ)
この時王は、尊は、なんと言っていたんだっけ…?
大切な、――――――…
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「…ま…るじさま、あるじさま!おきてください!うたたねはよいですが、こんのすけがもどってまいりましたよ!」
『…ん、ねてた、のか。…悪いな今剣。全員集まってるか?』
「もちろんです!あとはおねぼうさんなあるじさまだけですよ!」
『そうか…。顔だけ洗ってすぐ行く』
「はーい!」
懐かしい夢を見た。確かあれは尊が何か大切なことを言って、それをオレは突っぱねたんだ。
それが何だったか、忘れてしまったけど……
───なんて、嘘。本当は全部覚えてる
俺とアイツの我儘がぶつかり合って、結局二人して話にならないと諦めてしまったんだ。
諦めたくなんてなかったのに。
お互いが大切で、居場所を守りたくて、迷惑なんてかけたくなくて、でも相手には頼ってほしくて、応えてやれなくて、応えてほしくて、だから、だからこそ少しの後悔と届かなかった歯痒い想いを俺は持ち続けるんだろう。
『…そろそろ大広間行かないとなァ』
洗面所で顔を洗って情けない顔をしている自分をリセットする。
腕を伸ばし肩もぐるぐる回してから廊下を歩き出した。
運命の刻はもうすぐそこまで近づいている