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「主さん!戻ったぜ!!」

『愛染お帰り〜。後ろの胴着の子は保護した生徒?』

「そー!って、あ!そういや名前聞いて無かったな…名乗りもせず悪かった。俺は愛染国俊!」

「あー…尾白。尾白猿夫だよ。こっちこそごめん、助けてくれてありがとう」

『何、名乗り上げずに突っ込んで行ったの愛染』

「いやぁ〜尾白が一撃一回避で戦ってたもんだから俺も負けてらんねぇ!って思って背後にいた敵ぶっ飛ばして背中合わせで戦ってたんだよ!まじで炎はやばかったよな!」

「うん。すっごく助かったよ。熱いし敵は多いしで困ってたんだ。愛染が来てくれてラッキーだったよ」


あっはっは!と笑い合いながら尾白と拳をぶつけ合いお互いを称え合う。
そのまま尾白は葉隠と共に他の生徒と教師たちの元へ。


『あとは乱だけか…乱はどこ担当したんだ?』

「奥の山岳地帯だな」

『ま〜じで?あっちの敵は全員沈めたはずなんだけど』

「かくれんぼが上手なヤツでもいたんじゃ無い?」

『俺のツメの甘さか〜あそこにいたあいつらに悪いことしたな…』



「主さぁ〜ん!!たっだいまぁ〜!!」



『おー。お帰、り〜…?』



振り返った先には上鳴を横抱きにして軽い足取りではしり寄ってくる乱がいた。
上鳴は顔を手で覆っている。


『あー…うん、乱はとりあえず上鳴を下ろそうか』

「え〜!だめなの…?」

きゅるるんと音が聞こえそうなほど可愛らしい上目遣いで薊を見やる乱。
その後ろから耳郎と八百万が駆け寄ってきた。

「「薊さん!!」」

『2人共無事で良かった。悪かったな。俺の見落としで敵がまだ残ってたんだろ?』

「いえ、乱さんの助太刀もあって私たちはかすり傷一つ負ってはいません。羽織もお貸し頂きありがとうございます」

『いえいえどーいたしまして。先生たちの所へ帰還報告行っておいで。俺も行かなきゃならねーしっと、乱〜そろそろ上鳴も動けるだろうから下ろしなさいよ』

「はぁ〜い」

「ア…アリがとうござ、います…」

『…どーいたしまして。お疲れ様』


戦闘での疲れと横抱きされた精神疲労からかヘロヘロな上鳴に哀れみも込めてお疲れといい、彼に肩を貸す耳郎。
そして周囲の先生へ報告を始めた八百万を見送り、スーツを着たネズミの方へ歩み寄り片膝をついて目線を合わせる。


『アー…、初めまして。ここの最高責任者は貴方でお間違い無いでしょうか?敷地内にお邪魔させて頂いた事に関しまして説明をさせていただきたいのですが…』

「そうだよ!初めまして。ひょっとして時の政府からの使者というのは君かい?」

『!ええ。少し手違いがあったようで約束の時間に伺えず申し訳ない。話はどこまでご存じで?』

「そうだな…その辺の摺り合わせもしっかりしたいし、こちらもこんな状況でゆっくり話せそうもないからね。今日の事もあるし、明日こちらの教員と警察を交えてしたいのさ。構わないかい?」

『ええ、勿論。手間をかけさせてしまいますが、よろしくお願い致します』

「こちらこそよろしく頼むよ。僕はここ雄英高校の校長の根津さ」

『ご丁寧にどうも。筑前国の審神者をやらせてもらっている薊と申します。職務上偽名となっておりますがご了承頂きたい』

友好の印にと握手をしようと手を出せば、それに快く応じる根津。
相手の顔色を見て話し方や立ち振る舞いを考えようと思っていたが、いかんせん相手は鼠。
和やかに会話と握手をしても機嫌等感情の起伏が分からない。
自分の怪しげな立場をどうにか受け入れてもらえるようにと相手を立てるために敬語を使ってはいるが、自分の元の所属やらが相まって正しい敬語として使えてはいないだろう。
まぁ、相手に不快感を抱かせなければオッケーってことで。

すぐには対談できないこともあり、こちらが手を出した状況の報告を根津に済ませて一度撤退することにした。
こんのすけにここに残ってもらって根津校長らに必要な書類なり資料なりを受け渡したりしてもらうことにして、自分と刀達は帰り支度をするためにゲートの準備に取りかかる。

暴れるだけ暴れて退散なのも面倒なものである。
明日またここに来なきゃならんし。
周りの他の教師陣からの視線は厳しい。
いくら生徒たちを助け、共闘までしても詳しい事情なんて知りもしないのだ。無理も無い。
文句を言ってもしょうがないし、詳しい説明はこんのすけに丸投げで良いだろ。
そもそもここに落とされたの俺らのせいじゃねーし。
考えるの疲れた。帰ってさっさと寝たい。
そんなことを考えていると思わせないよう、呑気に鼻歌を歌いながら手を叩いて注目を集める。

『こんのすけ』

「はい!ここに!」

『明日の時間が分かり次第連絡寄こせ。俺らが行くまでにこちらの方々に説明よろ〜』

「え゛…!こんのすけを置いて帰られるおつもりですか!?」

『おー。人質がわりにな。信用のアカシ的な?』

「こんのすけはセリヌンティウスではありませんよぅ!?また適当に言っておられますね!?本来なら私めの役目は終えて…」

『えっ!!なぁに?こんちゃん。俺の記憶違いじゃなけりゃこの事態を引き起こしたのは時の政府の怠m…』

「あ゛ー!!あ゛ー!!分かりました!分かりましたよぅ!!誠心誠意お役目を全うさせていただきます!!」

薊の言葉をこれ以上聞きたくないとばかりに声を大きくしたこんのすけはあちら側へご挨拶に行き、ペコペコと頭を下げている。
横目でその光景を見つつ、集まった刀達の前にゲートを開く。

『そんじゃ皆様また明日〜』

手をひらひら振りながら周囲を見回せば、こちらを怪しむ視線と和やかなに手を振り返す生徒とで両極端な視線にさらされつつ帰る事を優先した。








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