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そうして止めた一瞬の隙に男が遠方からの狙撃を受け、よろめいたと同時にとっさに少年へ腕を伸ばし身をねじって地面と少年の間に入りクッション代わりとなった。



「なっ…ん…!」

「いったぁ〜い!あーもう!あっ、ケガしてない?!大丈夫?」

「…うぇぃ…」

「きゃあ!大変!頭打っちゃったのかなぁ!?ちょっと〜!自分の名前ちゃんと言える!?」

「あー…ねぇ、そいつ元々ショートしてたから大丈夫だよ」

ボブカットの少女が乱に告げる。
すると、あ、そうなの?なぁ〜んだ安心した〜!と言って少年から離れ、少女二人に近づく。

「ボク、乱藤四郎!君たちは?お名前、何て言うの?」

「耳郎響香だよ。助けてくれてありがとう」

「八百万百です。助力感謝致します。あの…もしや乱さんは薊さんのお仲間ですか?」

「そうだよ!八百万さんが着てる羽織ってやっぱり主さんのだったんだね!」

「ええ。ちょっと服が破けてしまったんですの。直接お礼とお返しをしたいのですけど…」

「なら広場の方へ行こう!服は着替えてるなら替えがあったんだね。良かった〜」

「あ、いえ、これは先程創りました」

「?」

「さぁ、行きましょう!まずは上鳴さんを運ぶ担架を創りますね」

八百万の創りました、という発言に頭を捻らせた乱だったが後で詳しく聞けばいいと思考を隅に追いやり、担架を創ろうとする八百万を止めた。

「ボクが彼を運ぶよ?二人は自由に動けた方がまた敵が襲ってきた時すぐに逃げられるでしょ?」

「ですが…」

「こうみえて力はそれなりにあるし、抱えてたとしても速さなら負けないよ!」

断られる前にショートしていた上鳴へ近づき、膝裏と背中へ手を入れて持ち上げた。
ひょいと簡単にお姫様抱っこ…※上鳴のメンタル面を守る為に以下横抱きと表記します。
横抱きされた上鳴は「うぇっ!?」と声を上げたあとは現実を直視したくはないのか遠い所を見始めた。
耳郎はそんな彼を憐れそうに見やり、八百万は口に手を当て純粋に驚いていた。



「ほらほら!早くー!」


上鳴を抱えたまま足場の悪いこの場所をひょいひょい器用に渡り歩き先導する乱を二人も慌てて追いかけた。











援軍到着後の広場はをというと、


「来たか!!」

「ごめんよ皆。遅くなったね。すぐ動ける者をかき集めてきた」

「1ーA飯田天哉!!ただいま戻りました!!」


…遅れて登場はヒーローの醍醐味っつーけど、まぁーじでテンプレ通りだな。
ここまでくるといっそ清々しい。

入り口には個性豊かな見た目の人達が揃って鋭い目つきで敵を睨みつけていた。


「あーあ来ちゃったなぁ…ゲームオーバーだ。帰って出直すか黒霧…」


その言葉を聞いたヒーロー達が逃がさないとばかりに遠距離攻撃を仕掛けたが黒霧の力で逃げる方が早く、何発か銃弾が死柄木に被弾しただけだった。


「今回は失敗だったけど…今度は殺すぞ平和の象徴オールマイト。あと、ザコ。お前も必ず連れて行くし、絶対に殺す」


そう物騒な予告を残して姿を消した。


さて、脅威は一旦無くなったわけだが…自分としてはこっちの人との“お話し合い”のほうがよっぽどの脅威に感じているわけで…
指揮を執っているのはどの人かと目線をさまよわせるも、目についたのは一匹のスーツを着たネズミだった。

いやいや、そんな訳はないだろうと近寄りながら会話に聞き耳をたてていると、

「なんてこった…」

「これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんて…」

「完全に虚をつかれたね。それより今は生徒らの安否さ」

その後の会話もネズミを中心に指示が飛ばされ、灰色の角張った人…恐らく男性だろう。
遠目からだと把握はしきれないが、オールマイトと彼に駆け寄った切島って言ったっけ?
ともかく、薬研が紹介した少年とオールマイトを分断するように壁を作り上げていた。
何かしら隠したい事でもあったのだろうと当たりをつけ、知ったら後が面倒くさそうだったので見なかったことにした。


ネズミが指示を飛ばしていることについては、ほら、アレだ。
ウチにも前に居たしな。
馬で異能持ちの「馬刺し」が。うん。それと似たようなもんだろ…あいつは飛べないペガサスだったけど。

あのネズミ馬刺しより知能高いんだろうな…あぁ、あいつ今は青服んとこで「白あん煮込み豆腐」って呼ばれてるんだったか…?


そんな余談はさておいて。


『薬研、平野連れてきてくれ。青江は蛍丸な』

「りょーかい」

「分かったよ、主」


二振りに指示を出した俺は散った生徒のもとへ送り出した自分の刀達を待つことにした。
軽い足音二つが遠ざかるのと同時に近づく音が一つ。


「…主」

『お、お帰り小夜。ずぶ濡れじゃん大丈夫か?ケガも後で治療するから少し待っててくれ。報告があれば今聞く』

「…はい。あの丸屋根の建物の中は台風のようになっていて常闇踏陰、口田甲司の生徒2名と共闘。敵は全て捕縛して引き渡しも済ませました…」

『なるほどな、了解。お疲れさん』

こくりと頷いて側に控えた小夜左文字と共に入り口方面を見やると丁度薬研と青江が平野と蛍丸を連れて戻ってきたところだった。







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