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青江か薬研を生徒のお守りに回すかと目をやれば、下がってきた青江が気づき軽く頷くと生徒と脳無、黒霧の間に立ち盾になるように動く。
入り口の方には平野がいるから問題無いと自分と薬研は前だけに集中した。
「クリアして帰ろう!」
「おい、来てる。やるっきゃねぇって!!」
宣言通り生徒の方へ一直線へ走ってきた死柄木の前に青江が立ち塞がる。
「下がっておいで。僕が出るから問題無いよ」
青江が生徒の前に立ったのを見たオールマイトはこちらに走り寄りながら声をかけてきた。
「青年!!私がやろう!」
そう声をかけてくるやいなや、脳無へ右ストレートを繰り出した。
拳の風圧に吹っ飛ばないように薬研と共に後方へ下がる。
殴りかかられた脳無も同じように拳で相殺していた。
「この勢いじゃサポートに入らない方が無難そうだな大将」
『このラッシュを縫って攻撃しかけてのサポートは無理ゲーだな。一旦体を休めておけよ』
「了解」
「“無効”ではなく“吸収”ならば!!限度があるんじゃないか!?私対策!?私の100%を耐えられるなら!!更に上からねじ伏せよう!!ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!敵よこんな言葉を知っているか!!?」
――Plus Ultra!! ――更に向こうへ!!
何十、何百と拳を叩き込み、血を吐きながらアッパーを入れて脳無を彼方へ吹き飛ばした。
“ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの”ねぇ…。
それが出来りゃ誰だって苦労も後悔もしねぇっての。
現状をぶち壊せる力があれば俺はあの日俺の友を、俺たちの王を救えたのだろうか…?
考えたって今更だ。
あの日に帰る事なんて出来やしない。
…答えなんてありはしないんだ。
ただこうありたかった、なれたのではないかという希望論にしかならねぇ。
俺があの日を後悔していたとしても、役に立てずとも、力が無くとも、でも、それでも残された物を預けられ、任された。
これから先なにがあろうともそれは、それだけは譲れない。
――――誓いも意地も貫きゃそれは俺の誇りになる。
背を預けて貰えるように、安心して貰えるように、常に前を見ていろと送り出したんだ。
俺はただあいつの背負った大切なものと、手の届く範囲の俺自身の大切なものを守れりゃそれでいい。
オールマイトのような“皆”のヒーローに俺はなれない。……なりたくない。
大事なものを預けてもいいと思ってもらえるような、そんな“あいつにとって”のヒーローであり続けたい。
「…コミックかよ。ショック吸収を無いことにしちまった…究極の脳筋だぜ。デタラメな力だ…再生も間に合わねえ程のラッシュってことか…」
『生身の人間がこれ出来るってマジでやばいね』
「大将だってやりゃできるだろう?」
『いや、ムリ。いくら器用なお兄さんでもこれはムリ。まず体作らねぇとムリ。つまりムリ』
「やる気すら持ってないな」
『体作るだけであのスペック持てたら今頃俺も皆のNo.1ヒーローになれると思わねぇ?』
「無理だな。大将は身内にゃ甘いが他人は後回しだろう?“皆”のヒーローにゃ向いてねぇな」
『良く理解されてるって喜ぶべき?それとも他人に冷たいと遠回しの批判に反省するべき?』
「向いてねぇってだけさ。人間味のある大将ってこった」
『そりゃどーもー』