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「薬研は倒壊した建物の方!身軽でしょ!愛染は火の手がある方へ!救出の速さ優先!平野は入り口ゲートで護衛!小夜はドームの方!何があるか分からないから気をつけて!後藤は向こうの土砂の方!足取られないでよね!僕は奥の山岳地帯の方へ行く!水辺と広場は主さん達がいるから任せちゃおう!」

「「「「「了解」」」」」

それぞれが方々に散り、背を向けてかけ出した。



―土砂ゾーン―

後藤が指示に従い駆け抜けて行くと、いくつもの土砂の山が見受けられ、奥へ奥へと向かうにつれ異様な状態に気がつく。
空気がひんやりと冷気を帯び始めていたのだ。
何が起きているのかとぐんと更に走る速度を上げた。
走った先に見えたのは辺り一面が氷づけになり、おそらく敵であろう人々が氷像になっている光景だった。

「この先で何が起きてんだ…?!」

確認するために更に奥へ足を進めると、紅白の髪をした少年が追い詰めていたようだ。
聞き耳をたてると、オールマイトという人物を殺すための計画を聞き出していた。
思わずぽつりと後藤は呟く。




「やり手だなぁ。大将が気に入りそうだ」




声は意外と空間に響き、尋問していた少年はこちらにいぶかしげな目を向けた。

「新手か…?」

「いんや、俺はあんたの味方。大将が敵に囲まれてるだろうから助けてこいって」

「証拠は?」

「俺があんたを襲う理由が無い。つーか、助けに入って信じてもらうはずが戦闘が終わってた時点で俺の残る仕事はあんたを無事に仲間のところへ護送することなんだよ」

両手を上にあげて敵意は無いとアピールするも、眉間にシワを寄せて睨む目は鋭い。








「はぁ…わーったよ。俺はあんたにこれ以上近寄らねぇよ約束する。急いでんだろ?広場の方へ行けば俺らの大将が手を貸してる。それ見て判断してくれ。俺が動けないように足を凍らせてくれてもいい」

「…そうさせてもらう」

パキパキと足首まで固められ、それを確認してから少年は駆け出して行った。

「あー…大将にどやされっかなぁ〜怒るとこえーんだよな…。はぁ、…おーい!!紅白少年の仲間で誰かここにいねーのかー!?おーい!」

いないならいないでまぁ、問題無いなと足下の氷を砕きながら声をかけ続けた。
すると少し先の方から声が返ってきた。

「あの〜!ここに一応いるんですけど、本当に味方?」

「お〜味方味方。誓って危害は加えないって」

「ん〜じゃあ、そっち行きま〜す!」

「おー。氷割るからちょっと待ってろ〜」

バキバキと刀の柄を勢いよく振り下ろしながら氷を割りきると、近くに寄ってくる気配と足音を感じて顔を上げた。

が、そこには誰もいない。
しかし手袋が浮いていた。
下に目線を落とせば、靴がある。
もう一度顔を上げた。何も見えないが、気配は確かにそこにある。






「…え?」





「どもどもー!いや〜急に襲われちゃって隠れてたんだよ〜!君、名前は?私は葉隠透!よろしくね!轟君クソ強かったね〜!凄いよね〜!」





「…え?」






テンション高めの女の子の声はする。
手袋が元気良く動いているのも分かる。
しかし思考は追いつかない。




「…う、うおー!!え、透明人間!?そんなんありかよ!?すっげー!!」

「わっ!びっくりしたー!」

「わりぃ!俺は後藤藤四郎。兄弟が多いから後藤って呼んでくれ」

「後藤君?名前の方がいいんじゃないの?」

「いや、藤四郎っつーのは刀工の名前なんだよ。藤四郎が作った後藤っつー刀が俺。」

「なるほど…?とりあえず後藤君なんだねー!よっろしくー!」

「おう!あ、轟ってさっきの紅白髪のヤツか?あいつ将来有望って感じだな!」

和気藹々と会話を交わしながらも葉隠を観察する後藤。
透明人間といえど、相手は少女。
表情はよく分からないが、声音である程度判断することは可能だ。
数に怯え、殺意を向けられることに慣れてはいないだろうと後藤は分析した。
饒舌なのも恐怖を忘れるためだろうと思い、相手に合わせできる限り笑顔で明るいトーンでの会話を意識し、周囲に危険が無いか目を光らせる。
葉隠とここまで喋っていて新たに人が出てこないということは幸いにもここに飛ばされていた人間は先程の轟と葉隠だけだったようでゆっくりと広場へと足を向けた。







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