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――――同時刻



「数が多すぎ!」

「それだけ敵さんも必死なんだろうねぇ。……蛍丸、ちょっと抜けるよ?」

「奥の入り口の生徒の方?いいよ。危ないし、早く行って。俺だと振り回した時にケガされても困っちゃう」

「ここは任せたよ」

「はーい」


ダッと青江が駆け出し、階段を駆け上がる。
駆け上がった先では生徒を背に庇い、黒いモヤの敵と相対していた。


「――…手段が無いとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか」

「バレても問題無いから語ったんでしょうが!!」




その言葉と同時に指先から凄まじい勢いで吸い込み始めた。




「13号。災害救助で活躍するヒーロー。やはり、戦闘経験は一般ヒーローに比べ半歩劣る。……自分で自分をチリにしてしまった」




しかし、相手を吸い込んでいたつもりがいつの間にか自分の背後から自分をボロボロと吸い込み始めていた。










「「「先生ーー!!!」」」









「ねぇ、それなら僕の方が君と上手くやり合えるよ。…戦闘のことだよ?」

黒いモヤこと黒霧の首元へ刀を添えそう言い放った青江に対して黒霧だけで無く、相対していた13号以下生徒たちも青江の登場に警戒し、各々構えを取っていた。



「飯田ァ!走れって!!」

「…くそう!」



悪態をつきながらも敵に背を向け悔しそうに走り出そうとした飯田という少年を捕らえようと黒霧が刀を無視して動こうとしたのを読んで、すぐさま刀を振り下ろした。
が、斬った感覚は無い。
思わず自分の主である薊のように舌打ちが漏れそうになるが、堪えた。

「教師たちを呼ばれてはこちらも大変ですので」

ゲートを飯田の前に出され走ったが、間に合わない。

「チッ」

2度目は漏れてしまった。
そしてゲートを開いた黒霧へ同級生であろう別の少年が飛びかかり、押さえつけた。

「あの人相澤先生と共闘してたよね!?味方でいいんかな?」

「分かんないよ…!でも13号先生のこと庇ってくれた…!」

「飯田今のうちに行け!早く…!」

「くそっ!!」

「無視をするだなんて酷いな。君の相手は僕だって言っただろう?彼らに手出しはさせないよ」

「…あなたも大概邪魔ですね。しかし今は彼を優先させていただきますよ」

青江との会話で一瞬でも気を取られた黒霧の身体が宙に浮かぶ。






「理屈は知らへんけど、こんなん着とるなら実体あるってことじゃないかな…!!行けええ!飯田くーん!!」





その声とともに黒霧を宙にぶんなげた少女の援護にテープのようなもので更に黒霧を固定した少年の作った隙を見逃さず、青江は壁を蹴り上げ飛び上がって重力を利用し、体重をかけて斬りかかった。
切先がわずかに身体に刺さった感覚はあったが次の瞬間にはゲートの向こうへ刀身を飛ばされかけ、青江も瞬時に刀を引いて事なきを得る。
そしてその数秒の間に飯田を外へ逃がすことが出来た。

「…応援を呼ばれる…ゲームオーバーだ」

「それなら君の次の生活を保障しよう。獄中生活、なんてどうだい?」

「それはそれは…素敵なお誘いですが辞退させてもらいますよ。しかし良いのですか?私にばかりかまけているとほら、あなたのお仲間が大変なことになっていますよ?」








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