9
時間と視点は戻り山岳ゾーン
斬った張ったの立ち回りをしながら薊は三人に問いかける。
『少年少女名前は?名乗りたくなきゃお兄さんが適当に渾名つけるぞ〜名字だけでも可』
「私、八百万と申します!」
「ウチは耳郎!」
「俺は上鳴だ!」
自己紹介をしながらも八百万は個性を使って棍棒と耳郎へ片手剣を造り出していた。
『上出来。なぁ、八百万その棍棒ちょっと貸してくれ。そんで一旦全員固まれ。お兄さんコイツら頑張って吹っ飛ばしちゃうから』
「もう一本創造しますので問題ありませんわ。使ってください」
「ど、どうやって!?うぅわ!!!」
頭を狙われた上鳴は咄嗟にこちらに転ぶようにしゃがみこんで攻撃を避けた。
『燃やして吹っ飛ばすんだよっ!オラァッ!!ハハッ!燃えろ燃えろ!!』
棍棒に赤い焔を灯し、振り回す。
当たった敵は急速に焔が体を包み込んで悲鳴をあげる隙もなく意識を失って倒れた。
敵が倒れたと同時に焔は消え失せる。
「うぉっ!コエーー!マジ!今三途見えた!マジ!!」
『アッハッハわりぃな勢い余った!』
「そういうの後にしなよ」
「今はこの数をどう切り抜けるかですわ」
「つーかあんた電気男じゃんバリバリっと薊さんと一緒にやっちゃってよ」
「あのな、戦闘訓練の時見たろ!?ペアだったじゃん!!俺は電気を纏うだけ!放電出来ても操れねーの!!」
『ならそれオレも完璧感電しちゃうね』
「二人揃って男のくせにウダウダと…じゃあさ人間スタンガン!」
その言葉と共に耳郎は上鳴のケツを蹴り飛ばし敵へぶつけた。
『わぁ容赦ない』
「マジかバカ!!」
「ぐわわああああああ!」
「あ、通用するわコレ!俺強え!三人とも俺を頼れ!」
『いやいや、お子様に任せっぱはできねぇよ。サムズアップすんな』
「ふざけてんなよガキィ!!」
「お二人とも真剣に!」
『えェ、俺も敵さんと八百万に怒られてんの?マジ?』
「実際良い案だと思ったんだけど…にしても上鳴あんたコスチュームの要望に指向性の補助くらい書いとけっつー…の!!」
敵を蹴り飛ばして耳郎が上鳴のコスチュームについて苦言を言う。
弱点とも言うべき箇所をフォローしていないのは愚策と言えるだろう。
・・・
「出来た!…どうしても時間がかかってしまいますの…大きなものを創造るのは」
ムクムクと八百万の背中が膨らみ布の様なものを生み出す。それはバサッと音をたてて八百万と耳郎を覆い隠し、八百万が薊を呼ぶ。
「薊さん!入って下さい!」
『!…なるほどな。おっじゃましま〜す』
敵を押しやって転がり込むように薊が入り、意図を理解した上鳴が全力で放電する。
「!これなら俺は…クソ強え!」
バリバリビリビリ音が響いて暗闇の中で音が止むのをじっと待っていた。
音が止んで絶縁体シートから出ると、周りの敵たちはしびれて行動不能になっていた。
「他の方々が心配…合流を急ぎましょう」
「つか服が超パンクに…」
『あ゙ー…これとりあえず羽織りなさいよ』
着ていた羽織を八百万に被せ、活躍した上鳴へ視線をむければヘロヘロの状態。
どうやら脳がショートしたらしい。
「うぇーい…」
『え、彼大丈夫なの?』
「問題ありませんわ」
「ダイジョーブっしょ。前の時もなってたから」
『んじゃ、八百万と耳郎は上鳴連れて避難してくれや。それかお隣近所の同級生のとこに援護に回った方がいい。数は多い方がいいだろ』
「薊さんはどうされますの?」
『俺?俺は部下ん所一直線に向かって君らんとこの先生方とお話し合いかね〜』
じゃ、道中気をつけなさいよ。とだけ言い放って広場へ走り出した。