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前田を抜いて構えをとれば空間から現れたのは金髪の男と、その上に重なるように色々ギリギリな服の女子、更にパンクチックな女子が降って出てきた。
ゲートを潜ってきたというよりワープさせられた、というような着地のしかただったので恐らく襲われた側だろうと憶測を立てる。
「い゙!?」
「っ!も、申し訳ありません!」
「うわっ!」
『ハァーイいらっしゃーい』
片手を上げてヒラヒラと振ると三人が面白いくらいに警戒体制に入った。
「「「!?」」」
「敵か?!」
「誰?!」
『随分な言いぐさだなァ〜。俺にお前たちを襲う気は無いよ。取りあえず立てば?』
「し、信じられる訳無いでしょ!」
「そんな戦闘態勢を取っておきながらの発言は信用出来ませんわ」
『いや、周り見てみ?』
ちょいちょいと指をさせば潜んでいた敵がゾロゾロと出てきた。
「やっとガキ共を殺せるぜ!!」
「あの着物の男の事なんてあいつ言ってなかったぞ」
「構わねぇ全員殺せ!!!」
『な?』
「…その様ですわね」
「は?!そんな簡単に信用すんのかよ!」
「怪しい行動をとったら他の敵と同じように蹴散らしゃいいでしょうが!」
「私たちを襲うならば現れた隙だらけの瞬間に襲うと思いますわ。それに、この人が私たちと敵の間に立っていたからこそ襲われなかった、とも考えられますもの」
『おぉ〜女性陣は勇ましいね。少年もこれくらい自分に自信持って頑張れよ』
「なんで慰められてんの?!つか、学校の敷地内に敵と不審者だぞ!?焦るっつの!!」
『なぁに、ここ君らの学校の施設なの?スゲーね。俺も不可抗力でここにいるんだわ。後でお偉いさんに頭下げるからここは共同戦線張らない?』
「…私は構いませんわ。耳郎さんと上鳴さんはどうしますの?」
「ウチは構わないよ。ただしさっき言った通り不審な行動をとれば…」
『OK。少年はどうすんだ?』
「あークッソ!判ったよ!あんたを今は信用してやる!」
『よしきた。あぁ、オレ薊って偽名があるんだ。よろしくな〜』
「偽名って…怪しさ満点じゃねーか!!」
「ごちゃごちゃとうるせぇぞ死ねぇえ!!!」
「お二方ふざけないで下さい!」
一人の敵が声を張り上げ、武器を振り上げて襲いかかってきたのを合図に全員が自分の敵に駆け出した。
――――――
――――
――
同時刻の5分前。
薊に命令をされた通り風をきるように走り去り、索敵と奇襲に向かった青江と蛍丸。
駆け出していくうちにこの場所は色々なエリアが在ることが分かった。
「主わりと敵に囲まれてたね」
「そうだねぇ。大丈夫だと思ったから僕らを送り出したんだろうけど…まぁ、僕らは主の命令を守って期待に応えるだけさ」
「そうだね。あ、あそこ広場っぽい所に人がいるね」
「へぇ…子供が襲われているようだね。学生かな?」
「どっちにつく?」
「僕らの主なら不利な側につくだろうねぇ。それにこっちの政府の協力を仰いでいるんだろう?タチ悪そうな方は潰して恩を売っておくのが最善だと思うよ?」
二振りが目視した先には多勢に無勢という言葉がぴったりと合うように黒いツナギのような服でゴーグルをかけ、紐を操る男を確認した。
「じゃあ、あの中心で器用に敵をいなしてるゴーグルの人を守ればいいよね」
「うん。良いんじゃないかな」
足音を最小限に留めて二振りは騒ぎの中心部へと駆け出した。
「さぁ、斬ったり斬られたりしよう」
「んじゃ、派手に戦いますかっと!」
大太刀を振り上げ敵へと振り下ろす。
「なんだこいつら…ってぎゃあー!」
「くっ…新手か…!?」
蛍丸が敵への注意を引きつけている間に青江は一人で耐えて戦っていた男の元へひらりと片手をあげながら歩み寄る。
「やぁ。我等が主の命によりあなたを援護するように言われているんだ。一応味方だよ」
膝をつきながらもゴーグル越しに睨む目は鋭い。
「…そんな簡単に信じられるとでも?」
「うーん、そう簡単に信用してもらえるとは思ってないよ?一応自己紹介した方がいいならするね。僕はにっかり青江。大太刀を振り回しているのは蛍丸と言うんだ。…ほら、後ろ危ないよ?」
「死ねぇええ!!」
背後から大振りに腕を振って殴りかかってきた敵を駆け出した青江が斬り伏せ、男へと振り返り微笑む。
「ね、言っただろう?…あ、そうそう殺してないよ。峰打ちさ。これも主の命令でね」
「……決して信用した訳じゃない。が…今此処であんたらのことを潰すのは合理的じゃない。コイツ等を潰すのが最優先だ」
「うんうん。良い判断だ」