既視感と尋問

「お嬢さん、具合でも悪いのだろうか?」
『…ふふっ。どこも悪くないですよ。2度目まして、ですねラインヘルツさん。』

あぁ、そう言えばラインヘルツさんの名刺にライブラって書いてあったな。
なるほど。
彼の組織なのか。
私たちがニコニコしていると、レオとザップさんが声をかけてきた。

「「旦那!/クラウスさん!晴と知り合いなんですか!?/そいつ知ってるんすか!?」」
「以前公園でお会いしたことがあってね。」
『この前も今もなんだかご心配おかけしてしまってすいません。』
「いや、何も無くて良かった。その後探し物は見つかったかね?」
『いえ、まだ全然見つからなくって…。』
「そうでしたか…。大変申し訳ないが、今日来て頂いたのは雑談をするためではないのです。」
『あぁ、はい。えっと…、ぶらっどぶりーどでしたっけ?私には何の話しだかさっぱりで…。』
「レオナルド君、間違いは無いのだね?」
「…はい。」
「晴、どうか我々と共に来て欲しい。その二つについてきちんと説明しよう。貴女の疑問にも必ずお答えすると約束しよう。」
『…私それ聞く必要ありますか?忘れろと言うなら忘れますよ。というか忘れたいです。』

なんだか面倒そうな予感がして逃げようとしたけど3人以外の足音が近づいてきた。

「悪いけど、お嬢さんを帰すことは出来ない。抵抗するなら手荒になるが?」
「スティーブン、そのような言い方は…」
「甘いことは言っていられないぞクラウス。」
『あー…痛いことはイヤなのでついて行きますよ〜。はぁ……レオのばーか。』
「え゛。」









目を隠され耳を塞がれ手も拘束されて連れられた場所はライブラの事務所だという。
道中随分厳重に扱われたものの、全て外されソファに進められて座ったが、戦闘員であろう人たちが周りを囲っている。
おっかないなぁ。
尋問をするのは顔に傷のある男性のようだ。
スティーブン、と呼ばれていたその男性はデスクに肘をつき、手を顔の前で組んでこちらに問う。

「さて、お嬢さん。君の名前を聞こう。」
『私の名前は晴 村木です。日本人です。』
「君は自分の事をどこまで知っている?」
『…以前、ラインヘルツさんと会ったあの日、目を覚ました私は自分の名前以外の記憶を無くしていました。目覚めた家も、HLのことも、自分の事ですら私は知りません。』
「どういう事だ?」
『そのままの意味です。私は私の事ですら何も知らない。』







『教えて下さい。私は【何】ですか?』






レオは心配そうな顔でこちらを見ている。
私の視界にレオが入ったことに気づいたザップさんが庇うようにレオの前に一歩出た。
私は全く信用されていないらしい。
私が肩を落としていると、様子を見ていたラインヘルツさんが口を開いた。

「…君は、不死者や吸血鬼という存在を知っているだろうか?」
『いきなりファンタジーなものが出てきてびっくりなんですけど、まぁ、一般的に知られている事くらいは知っていますよ。何やっても死なない人とか、十字架やニンニクが苦手とか物語に出てくるようなものなら。』
「その存在が君だ。」
『は…?』
「【緋き羽根纏し高貴なる存在】有名な古文書の言葉でね。レオナルド君の眼には君の緋い羽根が映っているんだ。それに…」








スッと奥から顔に包帯を巻いている執事の男性が大きな手鏡を持って私に向けた。










「君は鏡には映らない。これが、決定的な証拠なのだ。」










空気が一層ぴりつくが、私からすれば「だからどうした」という気持ちしかないので特にアクションを起こす気は無い。
ぐでーっと行儀悪くソファに寄りかかり、手で顔を覆った。


『あー…こう、ドッキリ大成功!みたいなのって出てきたり…?』
「しないよ、お嬢さん。」
『ナルホド〜?』

あー、もう。どうすっかなーと悩んでいるとレオがザップさんの後ろから顔を出して申し訳なさそうな顔をした。

「ライブラは、その、簡単に言えばバンパイアハンターの集まりなんだよね。それで、前に晴に会った時はまだ僕はそんなこと知らなくって、話しの流れでぽろっと晴も緋かったって思い出して…確かめようとしてこんなことになったんだ。…だまし討ちみたいになってゴメン…。」
『ほぉ〜。いいよ、別に。』
「えっ、そんな簡単に…!今だって下手すりゃあんた殺されそうなんだぞ!?」
『んー…。別に私に戦う理由が無いしなぁ。獣だって刃を向けなきゃ牙は向けないでしょ。それとも何?私は問答無用で始末されるんですか?』

レオと会話しながらラインヘルツさんに首を向ければラインヘルツさんは首を横に振った。

「いいや、我々としてもBBについては未知な事も多い。我々ライブラに協力して頂きたいのだ。」
『条件をつけても?』
「それが通る立場だと思っているのかい?」
『スティーブンさん、でしたっけ?トップが下手に出てるのに上から圧力をかけてくるやり方は今ここでは良い方法とは言えないと思いますが〜?』
「今有利なのは我々であると分かっているからこそ、だよ。お嬢さん。」
『そのお嬢さんってのも腹立つなー。』

ブーブー文句を言えばラインヘルツさんがスティーブンさんを制し、私に促す。

「その条件を聞こう。」
『一つ、私は記憶と自分の身体を取り戻したい。その邪魔をしないこと。二つ、私はこの一つ目を何よりも優先する。三つ、貴方たちに協力するにしても非人道的な扱いや実験をされるのはイヤだ。』
「記憶が無いと始めに言っていたが身体を取り戻したい、とは?」
『私、一度死んでいるらしいんです。んで、誰かの手によって私は作り替えられた。だから、元の体に戻ってちゃんと死にたいんです。』

私の死んでいるという発言には何人かが息をのんでいるのが雰囲気で分かった。

「なぜ死んで作り替えられたと分かる?随分と君の記憶は都合がいいな?」
『手紙。誰かからなんて分からない手紙が目覚めた家に置いてあった。』
「その内容は?」


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