確認と急展開
あれから何ヶ月か経ってアルバイト先は近所のガソリンスタンドのヒューマ担当になりました。
なんかね、色々聞きながら調べたりしていたらめちゃくちゃ職場の人に憐れまれてとても優しい職場です。
ビヨンドの人たちは色々特殊で危ないからと区別してくれたり、私がちんぷんかんぷんな事を言っても丁寧に教えてくれる。
ビヨンドの優しい先輩もいるしだんだん宇宙人っぽい感じにも慣れてきてそれなりにやっていけそう。
安い端末も手に入れてレオと頻繁に連絡を取り合っていて、なかなか充実した日々を過ごしている。
…二つ気になることがあること以外は、だけど…
一つ目
食が!!口に!!!合わないよ!!!!
日本の米!醤油!味噌!発酵食品!これが恋しくてたまらない。
味覚は日本人なんだなぁ。
記憶は相変わらず戻らないし、おぼろげだけど「今」すら覚束ないのはまずい。
身体に不具合は今のところないからいいけど…。
二つ目
こっちの方が割とやばいかも。
自宅では鏡に自分自身が映るのに、外では鏡やガラスに自分が映らない。
人でない証だ。
私は何に作り替えられた?
ワカラナイ。
おかげで人目をめちゃくちゃ気にする。
神経がすり切れそうにもなったが、堂々としていれば案外バレないことも分かった。
人の脳はわりといい加減で当たり前の事はあって当然、不自然なことが微量あったとしても脳があるように錯覚してしまうということがあるらしい。
簡単な例えを言えば、誤字があったとしても人は正しい内容で読み解くことが出来る、といったことがそれにあたる。
影の無い人はいない。
人では無くなってしまった私にもある。
ただ、鏡や反射するものに映らなくなった、というだけだ。
だからこそ、そのことに注視しているような希有な人たちでなければ指摘されることも無い。
だからといって全く隠してない訳ではないけれど…。
わざと人通りの多い所を歩くようにしている。
木を隠すなら森の中ってね。
自分から異物であることを主張したいわけじゃない。
黙々と歩きながら職場へ向かう途中、レオから【会って話しがしたい】とメールが入った。
実際に会うのは初対面のあの日ダイナーで話して以来になる。
いつもなら電話かメールでやりとりをしていたのにどうしたんだろう…?
仕事の終わる時間を連絡して、返ってきた内容は【ここに来て欲しい。住所は――…】
調べてみれば、瓦礫の多い崩落の名残が強いとある場所。
何故?と思いながらも【分かった。また後で】と返してやりとりは終わった。
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たどり着いた場所には久しぶりに見るレオは褐色肌の白い服を着た青年と共にいた。
余計に頭の中にクエスチョンマークが飛び交う。
『レオ、急に会いたいってどうしたの?会うにしてもダイナーとかで良くない?あとその人誰?』
「あー…えっと、この白いのがザップさんで僕の職場の先輩。ちょっと晴に確認したいことがあって…。」
『ふーん?そう、はじめましてザップさん?って、あ。よく愚痴を言ってた先輩さんか!ど〜も〜。』
ぽんっと手を打ってレオを見ると苦い顔をしていつも糸目にしている目を見開いていた。
青い。
綺麗な青空のような、少し懐かしい色に感じた。
ふと、脳裏によぎったのは金髪のヘッドホンをした女の子の後ろ姿。
――――――誰なんだろう……・・・・
あともう少しでこちらを振り返って、青い瞳が…――――
「…やっぱり。」
ぽつりと呟いたレオの言葉で現実に戻された。
もう少しであの女の子の事を思い出せそうだったのに…。
「当たりか?レオ。」
「そうです…でも、少し待って下さいザップさん!」
「もう十分待ってやったろ。お前が遠くから確かめるだけでいいっつってんのにわざわざ真ん前まで出てきやがって!どーすんだよ!こいつが長老級だったら!!」
「晴がエルダーだったら!俺は初めて会ったその日にきっと死んでるって言ってんだろ!聞けよ!」
「だからっ―!」
『えっ、何々?なんなの?レオとザップさんは何が気にくわないの?』
「だーっ!おい!お前、ブラッドブリードならライブラって言やぁわかんだろ!さっさとそのクソみてーな演技をやm…」
『ぶらっどぶりーどってなんですか………?ライブラはどっかで聞いたことあります。』
私の発言に3秒ほど全員が固まった。
レオとザップさんはどっかと連絡を取り合っていたらしく、キャンキャン端末に向かって吠えていた。
「おいレオ!あいつBBじゃねーのか!?すっげーアホ面だぞ!!」
「どう見たって綺麗な緋色ですよ!鏡とか持ってないんすかザップさん!!」
「あ゙、え゙!スンマセン番頭!つーか姐さんたちも配置についてんすよね!?」
「え!?クラウスさんがこっちに来る!??ちょ、まだ待って下さい!晴は…!!」
…なんか盛大にdisられてるけど、聞こえなかったことにする。
よく分からんけど、ミスってぐだぐだなようだ。
その辺の瓦礫に腰掛けて落ち着くまで待つことにした。
頬杖をついて待つこと数十秒。
足下の瓦礫へ視線を落としていると、視界に誰かの靴が入ってきた。
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