路地裏と新しい出会いとそれから

「てめぇ!ぶつかっておいてこんだけの小銭で謝って許されると思ってんのかあぁん!?!!」
「す、すいません…!でも僕金持って無くて…!」
「うるせぇ!とっとと有り金全部出してボコられろ!」

うっわぁ…すごいテンプレ…。
お金出してボコられろは理不尽だな〜。

あ、と思った時にはもう遅かった。
ターゲットになってしまった青年とばっちり目が合ってしまった。

「あん?てめぇどこ見てやが…カモがもう一人増えたなあ?」
「俺たちの日頃の行いが良いからじゃねぇの?!」

ゲラゲラ下品に笑い合う男たちとは対照に私を巻き込んでしまったと思ったのか、胸ぐらをつかまれていた腕を掴んで必死に止めようとしてくれていた。
殴られてしまっているが。

相手は二人。一人止めた所でもう一人が私に近づいてきてこういった。

「お嬢ちゃん有り金全部出して楽しむのと、抵抗して痛い思いするのどっちか選びな!」

ギャハギャハ笑い出してうるさい。
というか、絡まれてるのにどうして私は恐怖を感じないんだろうか…?
新たな疑問が生まれてしまった…。なんてこった。

「おら!こっちへ来い!」
『…その人私の知り合いなので返して下さい。そしてあなた方の相手をするのは却下です。断固拒否。』
「んだとてめえ!!」
「ぐっ…君!逃げて!」
『逃げません!』

右腕を振り上げて殴ろうとしてきた相手の懐に入って鳩尾に右ストレート一発入れた後、そのまま奥に走り込んで驚いているお仲間に跳び蹴りを入れ、絡まれていた青年の手を引き、逃走開始。

「えっ!ちょっ!?」
『行きますよ!』

足をもつれさせながらも、彼は私に素直について走ってきた。
ある程度まで走ってから速度を緩めて歩き、ダイナーがあったのでそこに入ることに。
お互いの息が整ってから彼が口を開く。

「あの、助けてくれてありがとう。僕、レオナルド・ウォッチ。」
『どういたしまして。私は晴 村木です。』
「どうして晴は僕を助けてくれたの?この街じゃあんなことは日常茶飯事だから皆見て見ぬふりするのに…。つーか、チェインさんにも見捨てられたし…。」


最後早口で聞き取りづらかったけど、見捨てられたって言わなかった…?
ウォッチさん不憫だなぁ…。
かわいそうに思いながら疑問に答える為に私は口を開いた。

『何でって、見ちゃったからかなぁ…正直ウォッチさんがどうなろうが知ったこっちゃないんだけどそのまま見捨てたら自分を許せなくなるからだよ。自分のため。うーん…ごめんなさい?』
「いや、それでも僕は助かった訳だし、ありがとうって言わせてよ。」

謝らなくていいよなんて彼は言うけれど、完全な善意ではないからなぁ。

『ウォッチさん、私が巻き込まれたとき逃げてって言ってくれたよね。』
「そりゃ言うだろ!僕と目が合ったから巻き込まれた訳だし…。」
『好奇心に駆られてのぞき見してた私も悪いんだし…』

お互い様ってやつでここは一つ、なんて適当に言ってこの会話を続ける気が無いことをウォッチさんも気づいてメニューを二人で眺め始めた。
なんやかんやウォッチさんが出してくれる事になり、バーガーセットをお互い選んで注文してくれた。

『ウォッチさんってお兄ちゃんだったりします?』
「えっ、あ、うん妹がいるよ。」
『あーぽいぽい。進んで気づいて色々やってくれるお兄ちゃんって感じする!あ、しますね。』
「いや、敬語とかいいよ。それにウォッチって言いづらそうだし、レオって呼んでよ。」
『わーいありがたくレオって呼ばせてもらいまーす。日本人にウォッチは言い慣れないんだよね〜。』
「へ〜ジャパニーズなんだ。HLには観光で来たの?」
『いや、ちょっと探し物をしに。』
「そうなんだ…見つかるといいね。」
『うん。ありがとうレオ』

そのまま何てこと無い会話を続けて職場の上司の話だったり、先輩の愚痴とか時間が許す限り会話して、私も自分の身に起きた事をかいつまんで話したり。
っていっても私の話しなんて気がついたらHLに置き去りにされてて大事なものを奪われていたって話ししか出来ないけど…。

話しは盛り上がって別れ際にレオの連絡先までもらってしまった。
私に連絡手段は無いので近々買ったら連絡することを約束して解散した。







一度あの目が覚めた家へ戻り、細かい所の家捜しを開始。
お金や生きるために必要なものがどこまであるのか把握するためだ。
保険証が無きゃ病院にも行けない。っていうか、この身体は病気になるんだろうか…?
どこまで作られた身体なのか分からない。
いっそ取扱説明書みたいなのは無いのかと開き直って探した。が、見つからない。

クローゼットもバッと開ければシンプルなワンピースからごってごてのロリータの二択しか見つからず、夢かと思って何度か扉を開いたり閉じたりした。変わらなかった…。
オヨウフクタクサンウレシイナーワーイ。なんて現実逃避したり…。


お金はここの相場がいくらか分からないけれど、少しはあったのでとりあえずはアルバイト探そうかな!




[ 5/19 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
×
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -