終わりの始まり

ダイニングへ戻った私は、茶封筒を手に取り開封した。
中には一枚の紙だけ。広げればシンプルな白い紙。





――初めまして、こんにちは。

貴女は先程死にました。

死を受け入れ、眠りについた貴女をボーナスステージへご招待致します。

その身体は最高傑作です。

上手に活用してください。――――

P.S この家はおまけです。お好きにどうぞ。







『……ぇ?』



自分の声、というよりも声がどこから出てくるのか分からなくなったような、無いものを振り絞ったような小さな音。
死…?え?…ボーナスステージとか意味分かんないし身体って…え…?
弾かれるように洗面所に走り、着ていた服を脱ぎ捨ててお風呂場の全身鏡を凝視した。
足下から徐々に視線をあげて、腕や背中まで確認する。
首から顔まで凝視して自分の顔を見るが、いつもの自分のもののはずだ。
しかし、あんな手紙を見た後で自分の顔や身体に違和感しか持てない。確信なんて出来ない。
見覚えのないアザなどは見当たらない。



…最高傑作ってなんなんだろう。
左手には手紙をぐっしゃぐしゃに握りしめて、右手はグーパーグーパーと動作確認の為に動かして呆然とみていた。



ふと、窓の外を見ればなんだか見通しが悪かった。
さっきまで朗らかな晴天だったのに…。窓に近づき外をじっくり眺めれば、その正体は「霧」だった。
そんなに急に天気が変わるものだろうか?
もう何もかも考える事を放棄したい。分からないことだらけだ。



誰か…誰でもいい…助けて…。
大丈夫って誰かに笑い飛ばしてもらいたい。
呼べる名前を思い出すことも無く、ただただ自分以外の「誰か」を求めた。
悲しい、怖い、淋しい…マイナスの感情が自分の中でぐるぐるとうずまいてどうしようも無い。
声にならない叫び声が喉から出そうになり、手で口を覆った。



誰か……






誰か…………!!







      た




   す




        け




          て












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