始まりの終わり

「…晴ちゃん、準備はいいかい?」
『いいよ。』
「本当にこれで良いんだね…?」
『うん。』
「湊君のこと、1人にしてしまうんだよ?」
『だって、どうしようも無いじゃん。私か湊、どちらかがやらないとどちらにしても死んでしまうんだから。』
「世界か自分か大切な人か。お互いを選んでも世界が終わって心中。世界を取るならお互いどちらかの死…。運命はどうして君たちに酷な選択をさせるんだろうね。」
『それ、私たちの命を奪う側の綾時が言うの〜?』
「僕だって出来ることなら奪いたくないよ。苦しんで欲しくない。だから言ったでしょう?僕を殺して全て忘れて世界と心中しようって。」
『ははっ絶対イ・ヤ!…ごめんね綾時、君に嫌な役割させちゃって。』
「ふふっこういう時ヤンデレってやつなら喜べるのかな?愛しい君が誰かのものになるくらいならいっそって感じ?」
『なら私は殺されても一途に湊だけを思い続ける健気な役?』
「『似合わないなぁ〜!!』」

ゲラゲラ笑っていられる空間ではないのに学校の休み時間のそれのように笑い合う。
これが最後とお互いに分かっていた。
だから≪日常≫を感じていたかった。












…さぁ、≪大いなる封印≫を開始しよう――――――








暗い、仲間も誰もいない空間でたった一人。自分だけで背負うと決めた。
守りたいたった一人の為に。
ここに来る前にどっちがやるかで盛大にケンカをしてしまった。
らちがあかなくて無理矢理引きずり落として真田先輩に投げつけてきたからあとでお説教は覚悟しておかないといけない。
きっと、それが最後。意地でも約束の日までは覚えて生きていたいけれど…。


たぶん、難しいから。


手にした薙刀と召喚銃を握りしめて私は…――――――――
















――――――――――――――

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――――――



────……あれ、私さっきまで何してたっけ……?
ぼうっとしたままとりあえず寝転がっていた体を起こす。
周りを見渡せば温かみのあるカントリー調の部屋。タンス、机、イス、ベッドの簡素な部屋。
見覚えが無い。つまり、ここは私の部屋じゃない…たぶん。
…どうして私はここで寝ていたんだろう…。…わからない…名前は…?…村木。村木晴。大丈夫、思い出せた。
窓の外は朗らかな日差しでいい天気だ。ポカポカ気持ちがいい。このまま寝てしまいたい気持ちが大きいが、この家の人に話を聞きたい。
誰か居ないだろうか…。耳を澄ましてみても物音は聞こえない。
ベッドから下り、扉へ手をかけたところでもう一度扉の外へ意識をめぐらせてみるが、先程と同じように何も聞こえなかった。
ドアノブに手をかけて押し開けると、一畳ほどの長さしかない廊下。
はす向かいにも同じ扉があり、覗いてみれば寝ていた部屋と同じ造りで家具も同じものが置いてある部屋だった。
丁度その前に階段があるので、私はどうやら一番奥の部屋で寝かされていたらしい。
階段を降りていくと、リビングダイニングへ出た。
大きめのダイニングテーブルときちんと椅子も4脚設置されており、モデルルームのようだった。
キッチンも広々としたカウンター型で流しやコンロを見ても人が生活している雰囲気は感じられない。何もかもが綺麗すぎるのだ。そして物が無さすぎる。
引き出しを開けたり、戸棚を見れば食器や日用品が見つかるが全て新品で使った痕跡が無い。
ここまでくると誘拐でもされたのか?とか色々悶々としてくる。
ふと、先程見たダイニングテーブルの上にぽつんと置かれている茶封筒を見つけた。

『さっきは無かったのに…』

思わず手に取ってまじまじと封筒を確認する。表には何も書いていない。
裏返せば左角に「村木晴様」とだけ書いてあった。
……こういうのって表に書いて送り主を左角に書くものなのでは…?
まぁ、そもそもこれが私宛であるとは限らない。流石に中身を勝手に見るのは良くないと思い、封筒を元の位置に戻して部屋の探索をまた始めた。
他の部屋の扉を開け、お風呂場やらトイレやら玄関も発見した。

玄関には靴が1足だけ出ており、シンプルで動きやすそうなぺたんこパンプスだった。
シューズボックスを開けば出るわ出るわパンプスの山。
出ていたものとは違い、ロリータ系と言えばいいのか厚底でフリルのついた華やかなものだった。
靴は女性ものしか無い。家主は女性なのかと思い、もう一度リビングへ戻った。

外へ出るのは後回しだ。
助けて(?)もらっておいて無断で出ていく趣味は無い。


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