青空と玉砂利と喧嘩

―――――――――何度か人が入れ替わり立ち替わり、おぶられたどり着いたその場所は


































立派な日本庭園の玉砂利の上でした。



………なんで?????



手足と目隠しの拘束を解いてぽかんとした顔をさらしている自信がある。
こういう時って玄関でまずお邪魔しますの挨拶とかじゃないの?
それか応接室とかで座布団に座ってお待ち下さいとかさぁ…。
え、私の常識がおかしいの?玉砂利の上で正座待機するの?
罪人じゃ無いんだよ?
水戸●門とかの悪代官だって土の上だったやろがい。
玉砂利はシンプルに痛い。
えぇ〜って内心ドン引いてたら同じように立ってた横の上司も引いてた。
そうだよね!ライブラの時ですらソファーに座ってお話ししてたもんね!
手持ち無沙汰にきょろきょろ見回していたら他の柱の人達も到着したようで、賑やかな声が聞こえてきた。
これ緊急招集だったとしても皆さん足速すぎでは?
昨日の今日で招集されてるんだよね?

「今回の派手な緊急柱合会議の議題は?」
「なんでも日光を克服した鬼が現れたとか…」
「それが本当ならばその鬼がここに着く前にお館様の身の安全を確保しなければ!!!!」
「…。」
「だいたいよォ、鬼を見つけたならなぜ甘露寺は斬らなかったんだァ?!あいつは柱だろーが!!」
「甘露寺にも考えあってのことだろう。甘露寺はそこまで馬鹿では無い。そもそも途中合流した冨岡がさっさと鬼を始末していれば良かったんだ。」
「…我々が揃っているのだ。何の心配もいらない。早々に始末すれば良いだけのこと。」

おうおう、ずいぶんとまぁ好き勝手言ってやがりますね?
と、青筋をたてて甘露寺さんと冨岡さんを見てみたが、話し声が聞こえていたはずの甘露寺さんは何故か赤面して俯いてもじもじしているし、冨岡さんは前を向いたまますんとした顔をしている。
というか、あの中に甘露寺さんのモンペがいるな?
全肯定Botですか?青春ですね?
冨岡さんがとばっちりすぎて草生えそう。
とりあえず奥から冨岡さん、私、スティーブンさん、甘露寺さんという横並びで他の方々やお館様の到着を待つ。



「お、派手にもう着いてんじゃねーか!件の鬼はお前か?!」



問い掛けながら嬉々として頭に布を巻いてフェイスペイントを施した大男が近づいてきた。

















スティーブンさんに向かって。




どうやら私はスティーブンさんの陰にかくれてしまって見えなかったいたようで、代わりに鬼と断定されてしまったらしい。
そんなスティーブンさんは話しを理解しているにも関わらず、日本語不自由ごっこをしているのでガン無視だ。
目線すらそっちにやっていない。
これは怒ってるな?やばい笑うの堪えてて腹筋つりそう。

「宇髄さん!すてぃーぶんさんは鬼じゃないわ!」
「は?鬼の気配は確かにあるし、その例の鬼はどこに…」





『ブフォ!!ヒィwwwアッワラッテゴメンナサイ…』




堪えきれなかった。
めちゃくちゃスティーブンさんに睨まれた。
後から来た柱の方々にもすごく睨まれるわ殺気はすごいわで顔面引きつりながらスティーブンさんの陰から出る。


『あー、どうも〜。そうですわたすが件の鬼です。やべ、噛んだ恥ずかし!!』
「ブフッw!…すみません。」

噛んだ恥ずかしさから顔を両手で隠したが、かろうじて笑ってくれた甘露寺さんも謝っていたので場の空気は冷え切っている。
ツライ。

「彼女が件の鬼ですか?ならそこの男性は人のはずですよね。なぜここにいるんでしょう?」
「すてぃーぶんさんは晴ちゃんの上司で外国の方よ!日本語は分からないそうなの。」
「外国人の上司だぁ!?そんなもんは関係ねえ!!鬼は斬る!!」
「うむ!随分と愉快な鬼だが鬼は須く斬首する!!その上司とやらも邪魔をするならば致し方なかろう!!」


『わぁ!びっくりしちゃうくらい殺意高くて驚き〜!!弁明の余地すら与えられないんですか?ここは理不尽と暴力と地獄の極みですか?お宅らの大将が来いっていうから来たのに?勝手に私刑にかけようとするだなんて随分と躾がなっていませんね〜?その程度の部下しか教育が出来ない組織なんて質が悪すぎやしませんか?ねぇ?そこにいらっしゃるお館様とやら?』


私がにこにこと煽るように吠えれば奥座敷の襖が開いて二人の少女が姿をみせ、静かに一言告げる。

「「お館様のおなりです。」」

少女たちに手を引かれながらお館様が入ってくると、私とスティーブンさんに向けていた殺気を納め、膝をつく。
それを立ちながら見ていると凄まじい速さで膝かっくんされ、頭を押さえつけられそうになったが紙一重で回避。
スティーブンさんもしれっと避けていたので腕を引き共に彼らから一歩遠ざかる。

「お館様に失礼だろう。膝をつけ。頭を垂れろ。鬼共。」
『私たちはあんたらの仲間でも上司や部下でも無い。膝をつくのも、頭を垂れるのも自分のとこの上司にしますので。謹んで遠慮致しまーす。』

先程よりも強く殺意を向けてくる口元包帯男。
ねちねちと嫌みが続きそうだったが、それはすぐに止められた。

「私は構わないよ。皆も気にしないように。それよりも今日もいい天気だね。空は青いのかな?」
「お館様におかれましても御壮健でなによりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます。」
「ありがとう、小芭内。」
「畏れながらこの日光を克服した鬼を生かしてここにいる件についてご説明いただきたく存じます。」
「うん。それについてはきちんと説明するよ。蜜璃から報告をもらってはいるが、まずは自己紹介から始めようか。私はこの鬼殺隊の当主産屋敷耀哉。君たちの名は?」
『名前を名乗るのは構わないんですが、その前に一つよろしいですー?』
「お館様への口の利き方に気をつけろォ!!鬼!!!」
『うるせーよ良く吠える人だなー、もー…』
「すまないね。ここにいる者達は鬼に大切な人を奪われた子が多いんだ。」
『だからなんです?それをしたのは私じゃない。逆恨みも良いところだ。きゃんきゃん吠えて私とスティーブンさんに当たるなよ。良い迷惑ですねー。』
「てめっ!!!」
「実弥。」
「っ!申し訳ございません、お館様。」
『おー、いっそ清々するくらいこっちに向かって謝らない姿勢なの逆に尊敬しますわー。』

パチパチ拍手して煽る晴に話しを促す産屋敷。

「それで?自己紹介の前に言いたいこととはなんだい?」
『いや、普通に座敷で座って話したいんですけどってだけですよ。なんで私たちここに来て茶も出されずに立たされてるんです?失礼千万では?』
「「「「は?」」」」
『え?お客様は普通もてなすでしょう?おもてなし大国気遣い国家の日本じゃないんですか?え?』
「ふふっ。そうだね、わざわざ来てもらったにも関わらず不躾な対応をしてしまってしまったこと重ねて詫びよう。いい茶菓子があるんだそれで手打ちにしてくれるかい。」
『おっ!話しの分かる方ですね!やったー!』
「お待ち下さい、お館様!!流石に鬼を座敷に上げてお館様と対等に話すことは御一考して頂きたく存じます!!!」

突っかかってきた傷だらけの男、ねちねち包帯男、その次は炎のような髪をした声のやたらでかい男。
産屋敷さんが黙らせた側から次から次へとあれは気に入らない、これも気に入らないと話しの腰を折られ続けた晴はついにキレた。










『うるっせーーーーーんだよ!!!!!ボケぇえええええ!!!!!あんたらの大将がいいって言ってんだろーーーーーが!!!!ばーーーーーーーーか!!!!』










『一々ねちねちとお前らは嫁いびり大好きな姑か!!?!こっちは来てくれって言われて来たの!!!別にお前らに小指の爪の甘皮ほども興味ねーーーーーーーわ!!!!人を殺戮者みたいに言いやがって!!こちとら誰も殺したことはないし!!!殺す予定もないわくそったれ!!!いいから黙って話しを聞いてろや!!!そんなに私の存在が怖いなら抜き身の刀身握りしめてガタガタ震えながら良い子にして聞いてろ!!!!』



ぜぇはぁと息を切らしながらキッとにらみつける晴。
そんな晴の様子にぽかんとする者、言葉の内容を理解して血管が切れそうなほど怒りをたぎらせる者、興味が無い者、笑い出す者と様々な反応をみせた柱。
スティーブンさんは勿論笑い転げている。



………日本語不自由ごっこはどうしたんでしょうねぇ?!このくそ上司!!!

[ 17/19 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -