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湊君の病室についた


結構ドキドキしながら扉に手をかける。

彼の部屋は個室って聞いたからここのはず…。

「…失礼しまーす…」

なんてぼそぼそ言いながら入る。
案の定、湊君はベッドで寝ていた。
…相変わらず、まつ毛長いなーなんて考えながらただ覗き見る。

左腕が点滴につながれていて布団の上から出ていたので握ってみた。
握り返してくれないのは当たり前だけど、なんだか寂しかった。

トリップして湊君と出会ってからもうすぐ10年くらい経ってしまう。
実質一緒にいたのは2年間位だったけど、湊君が私を覚えてくれていたことが何より嬉しい。
自分が此処にきた意味なんてわかんないけど、昔立てた目標はまだ揺らいでなんか無いし、達成する気はある。







例え何を犠牲にしたとしても。







悶々と考え事をしていると眠くなってきた…

うつらうつらとしながら意識を手放して―――




「ようこそ。村木晴様。私の名は、イゴール。…お初にお目にかかります。
さて、ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所…
ここは、何かの形で“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋…」
「へー…私契約した覚え無いんですけど。」
冷静に言い返してみたけど、結構身に覚えがある風景にぐっと手を握ってみた。けど気持ち悪い。

私の予想があっているなら、私は、私のペルソナは“ワイルド”になるのか…

「貴女様はコチラの世界に渡った時点で契約は果たしたと見なされ、この“ベルベットルーム”のお客人となりました。」
「ほっほーぅ。」
「…悪どい顔をされておりますなぁ…。
まぁ、兎も角貴女は“力”を磨くべき運命にあり、必ずや、私の手助けが必要となるでしょう。
貴女が支払うべき代価は1つ」

“契約”に従い、ご自身の選択に相応の責任を持って頂く事です。
…ご理解頂けましたかな?


聞いてくるイゴールに対してなんでイゴールがトリップしたことについて知っているのかとかそんな事どーでも良くなった。



湊君を救える力を私が持てる。



それだけが私の心を浮上させた。

「分かりました。」
一言だけ答えた私にイゴールが“契約者の鍵”を渡してきた。

「案内人は後で紹介しましょう。」
また、お会いきましょう…



―――――目を覚ましたら湊君の手を握ったまま椅子に座って寝ていた。
外はもう日が落ちてきていて面会時間が終わる時間だった。




「…また、来るね。」
















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