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「ただいま」
「お、おじゃま、します」
「あら、湊君お帰りなさい。隣の子は?」
「そこでないてた」
「そうだったの…なら、学校とお家には伯母さんから連絡しておくからお名前、教えてもらえるかしら?」
「あ、えっと……村木、晴…です…」
「そう、晴ちゃんね。心配しないでゆっくりしていってね?」
私が頷くと、いこう?と手をそのまま引かれて2階へ上がる。
パタンと扉が閉まって、改めて男の子の顔を見てみた。うん、将来イケメンになるねこの子は。
てか、なんだかよくわかんないけれど、お子さん学校さぼらせてすいません…なんてことを考えているが、まだ私の涙は止まっていない。
「ぼくのなまえは有里湊だよ。9才。」
「わたしは、村木晴、です。……一応おないどし、です。」
いきなり部屋に入るなり自己紹介を始めた。
頭の中はぐちゃぐちゃだし涙と嗚咽でしゃべるのが辛かったからそろそろ泣き止みたいけど、止まってくれない。
そのまま湊君にティッシュを渡されてベッドに座らせてもらい、ぐずぐずと涙をふいて…、
―――その間湊君は何も聞かずにただただ隣で手を握ってくれていた。
その子供特有の体温の高い手と、誰かが横にいるという安心感で私は泣き疲れて眠りそうになって、寝落ちするかしないかのボーダーラインであれ?そーいえば、ペルソナ3の主人公の男の子の名前って有里湊じゃなかったっけ?なんて、そんな事を思い出していた。
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ガチャ
学校と村木家に電話を終えた湊の親戚にあたる伯母が湊の部屋を覗くと、ベッドの上で子供2人が丸まって手をつないで寝ていた。
過去の事故で自分の両親を失ってしまった後からあまり他人に興味を示さず、感情の起伏が少なくなった姉の息子が1人の少女を家に連れてきたことは大きな変化ではないかと内心ほっと安心して喜んだ。
「…あらあら、ふふふ…よい夢を…」
静かに2人にタオルケットをかけて部屋を出た。
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